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第27話

もう少し周にいろいろ聞いてみようとしたら、ドアが開いて蒼史朗が戻って来た。 その表情が心なしか険しい。 「蒼史朗、」 「周。おまえ、留守番出来るか?」 綾の呼びかけには答えず、蒼史朗は真っ直ぐに周の元へと行くと、屈んで顔を覗き込んだ。 「おるすばん?」 「そうだ。1時間……いや、2時間ぐらいか」 蒼史朗は壁の時計を見上げて 「あの短い針が5の所になるまでだ」 時計に歩み寄って、数字の5を指差す。 「うん。わかったー」 周はこくんっと頷いてにこっと笑う。 「出掛けるのか?急用?」 「ああ。ちょっとトラブル発生だ。あや、おまえを近くの駅まで送るよ。バタバタしてすまないな」 綾は驚いて腰を浮かした。 「え。ちょっと待ってくれ。あまねくん1人で留守番させるつもりか?」 「周は慣れている。大丈夫だ」 「ダメだよ、そんなの。あまねくんはまだ5歳だろ?1人で留守番なんて、」 「仕方ないだろう。連れて行けないんだ」 蒼史朗の声に苛立ちが混ざる。 綾は首を横に振って 「じゃあ、俺がここに残る。蒼史朗が帰ってくるまで、あまねくんと一緒にここに居るよ」 蒼史朗は眉を顰めた。 「5時には帰って来れないかもしれない。もっと遅くなる可能性も…」 「だったら尚更だ。あまねくん1人で留守番なんかさせられないよ」 「…しかし、」 「俺が信用出来ないっていうなら、どうしようもないけど、」 「そんなことは言ってない」 「じゃあ、任せてよ。たいしたことは出来ないけど、あまねくんの様子を見守るくらいなら出来る」 蒼史朗は黙って、自分と周を見比べた。 「あや。おまえ、帰るのが遅くなってもいいのか?」 「別に構わない。もともと、気ままにあちこち出掛けて行って、どこかのビジホにでも泊まるつもりだったんだし」 蒼史朗は険しい表情をふっと和らげた。 「悪い……。じゃあ、周を見ていてくれるか?」 「大丈夫だよ、任せて」 綾が微笑むと、蒼史朗はホッとしたように頬をゆるめた。

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