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第30話
おやつを食べた後、あまねはしばらく夢中でお絵描きの続きをしていたが、そのうち欠伸を連発し、目を擦り始めた。
時計を見ると16時過ぎ。蒼史朗が帰るまでまだ1時間はある。
「あまねくん。お昼寝はしないの?」
はるか昔の自分が幼かった頃の記憶を思い出した。まだ幼稚園の頃は、たしか1日1度はお昼寝の時間があったはずだ。
「んー……。ねむいです」
「そっか。お昼寝、いつもどこで?ソファー?それとも寝る部屋?」
「おうちのときは、ベッドでねます」
周はまた欠伸を噛み殺し、今にも目蓋が落ちそうになっている。
「じゃ、寝るおへやにいこう、あまねくん」
「はい」
綾は立ち上がると、周の手を握った。
蒼史朗にお昼寝の世話までは聞いていないし、留守中にあまり他人の家の他の場所を勝手にうろうろしたくない。でも、周を寝室に連れて行くぐらいはいいだろう。
居間を出て、周に案内されながら廊下を奥へと進む。階段を上がると、2階にはドアが4つあった。
周はとことこと階段から一番遠い部屋へ行き、ドアを開けた。
8畳ほどの広さの洋室だった。庭に面した南側にベランダに出られるサッシがある。西向きの窓にはカーテンがひかれていた。
その窓のある壁にピッタリとくっ付けて、セミダブルサイズのベッドが置いてある。
「あまねくん。ここは君のおへや?」
「はい。あまねのおへやです。ようちえんのおどうぐは、みんなここにあります」
綾は周をベッドに連れて行くと、布団をめくった。
「じゃあ、よるはここで寝てるの?蒼史朗と」
周はベッドにあがりながら首を横に振り
「んーん。ひとりでねます。そうくんは、あっちのおへや」
周はそう言ってドアの方を指差した。
この部屋の向かいだ。
別々に寝ているのか。
「そっかぁ。ひとりでえらいね」
こんな小さいうちから、自分の部屋でひとりで寝ているなんて、寂しくないのだろうか?自分は5歳の頃、まだ親と一緒に寝ていた覚えがある。
周はごそごそとベッドに横になって、布団を被った。
「おやすみ、おまねくん」
「はい。おやすみなさい」
目を瞑ると、すぐに可愛い寝息をたて始めた。よほど眠かったのだろう。
綾は微笑んで、掛け布団を直してやると、もう一方の壁際に置かれたライティングデスクの椅子を引き出し腰をおろした。
ふと、デスクの奥にある物に視線が吸い寄せられる。
写真立てだ。
今よりもっと小さい頃の周と少し若い蒼史朗。そして、朗らかに笑う女性が写っていた。
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