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第41話

蒼史朗は本気で反省しているらしい。手のひらで顔を拭いながら、指の隙間からちろっと見上げてくるその眼差しが、叱られた犬のようにしょんぼりしている。 そんな素直に反省の色を見せられて、放って置いてくれとまで言われてしまうと、逆に気になってしまう。 ……もう……。 「ほら、立てよ、手、貸すから」 ムッとした顔のまま手を差し出すと、蒼史朗は少し驚いたように顔をあげて 「……いいのか?」 綾は無言で首を竦めた。 その手を、蒼史朗がむんずと掴んでくる。 「とりあえず、肩掴んで」 「ああ」 タイミングを見計らいながら、ぐっと腰に力を入れる。蒼史朗はもう一方の手で壁のタオルハンガーに掴まりながら立ち上がった。 「しっかり寄りかかれよ」 「だが……おまえ、潰れそうだ」 「ばか。さっきはこうやって玄関からここまで運んだんだよ」 「悪いな」 蒼史朗の体重が肩から腰にかかる。決して太ってはいないのだが、筋肉質なのだ。上背もあるから骨量も多いのだろう。ズシリと堪える。 よたよたと歩き始めた。蒼史朗の意識がハッキリしているから、さっきよりはそれほど辛くない。 「おまえの部屋。2階のどこ」 「周の、向かい側だ」 階段も、手すりを掴みながら慎重に上がる。途中、足を止める度に、蒼史朗は気を遣って壁に手をつき自分で自分の身体を支えていた。 ドアを開けると、周のより少し狭い部屋だった。古ぼけた大きなベッドとチェストが置いてあるだけだ。 「寝かすぞ?」 「ああ」 最後の力を振り絞り、抱えた蒼史朗の身体をベッドに下ろそうとして……床の何かを踏みつけてよろけた。 「うわっ」 そのまま、蒼史朗の下敷きになる形でベッドに仰向けに転がった。蒼史朗は咄嗟にシーツに手をついたが、スプリングの効いたベッドにのめり込み、腹の上にドサッと容赦なくのしかかってきた。ぐえっと変な声が出そうな衝撃に、綾は必死に腹に力を入れる。 仰向けの自分に、蒼史朗がうつ伏せに覆いかぶさっていた。 「……っ、ぉい、どけろ、って」 蒼史朗は何も答えない。押しのけようとしてもビクともしない。 「…くるし…っ、重いって、おい」 斜め上の蒼史朗の顔を覗き込む。 「ぐぅ……」 ……ちょっ、 綾は目を見開いた。蒼史朗は目を閉じ、いびきをかいて眠っている。 「おいっ、こら寝るな!蒼っ、どけってば」 耳元で喚くと、ゆらりと腕が伸びてきて口を手のひらで塞がれた。 うるさい、という意味なのだろう。 ……ちょっ、ふざけんな こんな体勢のまま、眠ってもらっちゃ困る。

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