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第4話※
岬は煙草に火をつけ吸い込むと、ふぅ……っと煙を吐き出した。
ベッドで寝タバコは危ないからやめろよ。
そう思ったが、今は文句を言う気力もなかった。
「相変わらず狭いな、おまえのケツ。食いちぎられるかと思ったぜ」
そういう言葉は聞きたくない。優しく出来ないなら、せめて黙ってればいいのだ。
岬は気怠げにまた煙を吐き出すと、ちろっと横目でこちらを見て
「浮気してたわけじゃないのか」
「……最初っからそう言ってるだろ」
「んじゃ、なんでキスマークなんかついてんだよ」
「だから……違うって」
綾はぐったりしてきて目を閉じた。
何もかもめんどくさい。
気持ちも言葉も通じない岬との言い合いは、うんざりだ。
「昨日、何の日だったか覚えてるか?」
身を乗り出してきた岬に耳元で囁かれて、綾は払い除けるようにして岬に背を向けた。
ちょっと動いただけでも、身体のあちこちが軋む。最近、ほぐすことすらしていなかったアソコが、引き攣れるように痛んだ。
……無茶苦茶……しやがって。
リビングのソファーで、座面にうつ伏せに押さえ込まれてローションでぬめる指を強引に突っ込まれた。
こちらが痛みを感じないようにほぐす優しさなんかないのだ。自分の欲望をねじ込みたいから拡げただけだ。
おざなりな手淫の後すぐ、岬は息を荒らげながら後ろからペニスをねじ込んできた。悲鳴をあげた口は、頭を押さえつけられてソファーの座面で塞がれた。
綾は、必死に頭を振って呼吸だけどうにか確保するのがやっとだった。
痛みと苦しさと悔しさと。
その中に混じる微かな快感と。
岬は勝手に興奮してきて、荒い息を吐きながら腰を振りたくる。
せめて裂けてしまわないように、いい角度に当てようと、尻を突き出し岬の動きに合わせて腰を揺らす自分が惨めだった。
ソファーで一度欲望を吐き出すと、ぐったりしている自分を抱えるようにしながら浴室へ向かった。シャワーの湯を浴びながら抱かれた。壁に押さえつけられて、優しさの欠片もなく獣じみた呻き声をあげる岬に犯された。
濡れたままで、お次は寝室に連れて行かれた。
もうやめてくれと懇願する自分をベッドに押し倒し、岬は狂ったようにペニスを突き立てる。
抗う両手はネクタイで縛られ、綾はただガツガツと身体を抉られていた。
もう、なんの感情も湧いてこない。
ただ早く終わって欲しいとだけ願っていた。
「なあ、昨日、何の日だったか覚えてるか?」
岬は後ろから抱きついて、甘えたような声を出してきた。
タチの悪い男だ。
好き勝手なことをして自分が満足すると、急に優しくなる。
「……知らない。覚えてない」
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