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第9話

箱根旅行で蒼史朗と楽しく過ごした様子が、どの画像からも溢れている。 蒼史朗が周の様子を撮った画像が数枚。 そして、道端で気になったものに次々とカメラを向けたのだとわかる周の撮った写真。斜めになっていたりピントが合っていないものもあるが、周がすごくはしゃいでいるのが伝わってきて、見ていると自然と頬がゆるむ。 20枚近い画像送信の後で「おんせんはきもちよかったです。あやくんもいっしょにいきたかったです」と、周のメッセージが入っていた。 「俺もだよ、周くん。今度絶対に一緒に行こうね」 綾は周のメッセージに向かって呟いた。 心がポカポカ温かくなる。同時に目尻から涙が頬に伝い落ちた。 綾は慌てて涙を拭うと、電話をしようかちょっと迷って、とりあえず周のメッセージに返事を書いた。 ……ダメだな。俺。昨日から涙腺緩みっぱなしだろ。 「よし。これでOK。さっさと写真取り込んでしまおう」 綾は自分に言い聞かせるように独り言を呟くと、パソコンを起動させた。 パソコンをいじっていたら、あっという間に時間が過ぎていった。気がつくともう辺りは真っ暗になっている。 「やばい。買い物して来なきゃ」 1人で過ごす時間が長くなって、最近、独り言が増えた気がする。綾は苦笑して、財布を手に玄関に向かった。 このマンションは駅から少し遠いが、すぐ隣にコンビニがあり、その先には食料品がメインのスーパーがある。 スーパーの閉店にはまだ1時間ほどあるから、綾は迷わずスーパーの方に行った。 次の給料日まではまだ20日もあるのだ。手持ちの金が少ないから、しばらくはかなり切り詰めて生活しなければいけない。 スーパーに着くと買い物カゴをぶら下げて、野菜コーナーをぷらぷらと見て回る。 料理は苦手だから、こういう時、何を選んでいいのかさっぱり分からない。 ……蒼史朗の料理……美味かったなぁ。 ものすごく凝ったものではないのに、ひとつひとつが丁寧に作られていて、普段インスタントばかり食べている自分には新鮮だった。あんな風に料理が出来たら、きっと節約になるし、1人で過ごす時間も寂しくないのかもしれない。 ……卵焼き……。あと味噌汁とか?米はまだあったから……肉か魚を焼いて……。 簡単な自炊をしていた時期もなかったわけじゃない。ただ、何を作っても思ったような味にならず、めんどくさくなってやめてしまった。 最近は仕事帰りに閉店間際のスーパーに飛び込み、半額シールの貼られている惣菜を買ったり、それが無理な時はコンビニの安めの弁当を買って済ませていたのだ。

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