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第10話

スーパーの袋を抱えて部屋に戻った。 身体が何となく重怠い。 平熱に下がったと思っていたが、また少し上がってきたのかもしれない。 結局、味噌汁はお湯を注ぐだけの即席味噌にした。特売の肉が更に割引になっていたのを2パック選び、味付けは市販の焼肉のタレに任せることにする。サラダや炒め物に出来る野菜を何種類か。そして、惣菜コーナーで売れ残っていた煮物と揚げ物のパックも、半額になっていたから買い足した。 これで節約になっているのか微妙な所だが、毎日コンビニ弁当を買うよりは、マシなのだと思いたい。 「まずはご飯炊かないとな」 キッチンに行って、冷蔵庫に買ってきた食材を仕舞い、米をといで炊飯器をセットする。さっき出かける前は気合が入っていたのに、身体が怠くてだんだん億劫になってきた。 ご飯が炊けたら、今日のところは即席の味噌汁と惣菜で軽く済ませてしまおう。 綾は、ドサッとソファーに腰をおろすと、スマホを取り出して料理のレシピを検索してみた。節約主婦の賢いレシピというサイトを覗いてみるが、冷蔵庫の余ったものを無駄なく使って…という割には、聞いたこともないような野菜や調味料の名前がズラズラと出てきて、まったく参考にならない。 ぼんやりネットサーフィンをしているうちに、怠いだけじゃなく頭痛もしてきた。 綾は、顔を顰めてこめかみを押さえ、目を瞑った。 多分、熱がさっきより上がってる。 解熱剤を飲んだ方がいいかも……。 考えているうちに、いつの間にか眠りこけていた。 眩しい太陽の子が一面を埋め尽くす向日葵畑。目を細めて見つめた先には、蒼史朗と周がいる。2人とも、楽しそうに笑いながら、こちらを手招きしていた。 「おーい。早く来いよ」 「あやくーん。こっちですー」 綾は、向日葵を掻き分けながら、2人の方に歩いて行く。でも、ちっとも距離が縮まらないのだ。 「待って、蒼史朗。周くん」 2人は笑いながら、こちらに背を向け、どんどん先に進んで行く。 縮まる所か、距離は広がる一方だった。 掻き分けても掻き分けても、向日葵の丸い花が邪魔をする。 そのうち、2人の姿はどんどん小さくなって、見えなくなってしまった。 唐突に目が覚めて、しばらくはここが何処なのか、自分が何をしていたのか、今は何時なのか、はっきりしないままぼんやりしていた。 ……そっか……。夢か。俺、あのまま寝ちゃったんだ……。 薄い膜が剥がれていくように、急速に意識がはっきりしていく。 途端に寒気がして、身体がガタガタと震え出した。

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