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第13話
「瀬崎さ、これからどうする?」
大澤の声に、現実に引き戻された。
綾はゆっくりと彼の方に視線を向けたが、言葉が出てこない。
「まだ考えられないよな。俺も立ち直るのに2、3日かかるわ」
「ああ……うん」
2、3日。では済まないかもしれない。
「これって、会社都合の失業ってやつだろ?ってことはとりあえず、ハロワに行くしかないよな」
「ハロワ?」
「ハローワーク」
「ああ……」
「俺、前にも1回経験あるんだ。だからまずはハローワークで失業保険もらう手続きな。未払いの給料貰うためには、労働基準監督署で書類貰ってくるんだよ。今回のがちゃんと破産手続き踏んだ倒産だったら、会社の資産から未払い分の賃金払ってもらうわけ。でもいわゆる夜逃げの状態で事実上の倒産の場合は、会社から貰うのは厳しいからな。国に立て替え払いをしてもらえるんだよ」
大澤の説明する言葉が、頭の上を通り過ぎて行く。綾は無言で相槌だけ打っていた。
「失業手当ては自己都合の場合は貰えるまで時間かかるけどさ、会社都合の場合は早く貰える。どっちにしろ次の職探ししなきゃ、だろ?だからまずはハロワに行って窓口で相談だ」
「……そうなんだ」
大澤は手をあげて店員にアイスコーヒーのおかわりを注文すると、また煙草に火をつけてゆっくりと煙を吸い込んだ。
「会社の倒産状況がどんな感じか分からないからな、一応、前島課長に相談してみるけど。それに未払いったって満額じゃないし、こないだの給料がなくなっちゃう前にどっかバイトでも探さないとだよな」
大澤はさっきの沈黙の間に、だいぶ気持ちを切り替えたらしい。もう前向きに今後のことを考え始めている。
綾は内心、感心しながらも、自分の今後はまだ考える余裕はなかった。
……バイト。そっか。バイト、見つけなきゃ。働かなくちゃ生きていけないもんな。
「そうだ、瀬崎。健康保険と年金も、切り替えの手続きが必要だよ。市役所に行って、国民健康保険に切り替えるか前の保険を継続で使える手続き、な。年金の方は払う余裕ない場合は、事情言って相談してみるんだよ。支払いを待ってもらえることもあるから」
「詳しいな……大澤」
大澤は首を竦めて苦笑いすると
「必要に迫られて詳しくなっちゃったんだよ。こんなの知らずに生きられた方が、幸せだけどな」
まったくだ。
こんなことが自分の身に降りかかるなんて、夢にも思っていなかった。
しかも、こんな最悪のタイミングで。
「ま。愚痴言ったって倒産しちゃったらどうにもならない。とりあえず、貰えるものはしっかり貰って、次に進むしかないよ」
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