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第17話
「こら。じっとしてろ」
「や、だって」
顔から火が出そうだ。
蒼史朗は起き上がろうとするこちらのおでこを、指でぐいーっと押し戻し
「熱があるだろ。とにかくまだ大人しく寝てろ」
押し戻されてぽすんっと枕に頭を沈めた自分の額に、蒼史朗が氷水で冷やして絞ったタオルをあててくれる。
ひんやりしていて、気持ちいい。
綾はきゅっと目を細めた。
蒼史朗の胸に顔を埋め、まるで子どもみたいに泣いてしまった。
周がよしよしというように小さな手で頭を撫でてくれたから、どうにも堪えきれなくなって、声まであげて泣いてしまったのだ。
目も鼻も真っ赤になった自分の顔を、蒼史朗は呆れもせずにタオルで優しく拭ってくれた。
2人の優しさが心にしみて、また凝りもせず涙が滲みそうになる。
ようやく落ち着いてくると、自分の行動の全てが、穴があったら入りたいくらい恥ずかしくなってきた。
「あやくん。ちゃんとねててください」
周にもたしなめられた。
小さなふっくらした手で、頬を優しくなでなでしてくれる。
「ごめんなさい。ぼくが、へんなの、おくったから」
眉を八の字にする周に、綾は慌てて首を横に振ると
「ちがうよ、あまねくん。俺が勝手に勘違いしただけだから。あまねくんはあやまらなくていいんだよ」
蒼史朗は苦笑しながら周の頭をわしわし撫でて
「たしかにな。大きな赤い車って聞いたら消防車のイメージだよな」
「や。俺が短絡的だったんだ。風邪ひいて熱が出てたから。まともに頭が働かなくてさ」
そう。まさかそれが、今日納車されたキッチンカーのことだったなんて、まったく想像もつかなかった。
だいたい、キッチンカー……いわゆる移動販売車なんて、自分の身近には今まで存在していなかったし、蒼史朗と周に全く結びつかなかった。
「3ヶ月前に中古のやつを買って、中の設備をこっちの注文通りに改装してもらってたんだ。本当はもっと早く出来上がって来るはずだったんだけどな」
「蒼史朗が、やるのか?移動販売」
「んー。本当は今の所から独立して店舗持ちたかったんだけどな。あちこち調べてみたけど、自己資金も足りないし融資もそれ程は受けられない。東京辺りでそこそこ回転のいい実店舗を借りるとなると、最初からかなりの利益をあげないと採算が取れないんだ。で、苦肉の策で選んだのがキッチンカーってわけだ」
「ふーん……。なんか俺には縁がなさすぎて、全然イメージがわかないけど……。何を売るんだ?蒼の専門は、和食だったよな?」
蒼史朗はちょっと苦笑いしながら首を竦めて
「天ぷら」
「へ……?」
「天ぷらと天丼だ。出来たらちょっと今までにない提供の仕方で、もっと気軽に食べられる天ぷらの店をやってみようと思ってる」
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