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第24話
「野菜……」
綾はきゅっと眉を寄せた。それを見て蒼史朗がくくく…っと笑い出す。
「おまえ、相変わらず野菜全般だめか。ほんと、子どもみたいなやつだな」
蒼史朗は呆れたように言いながら、バットの中からいんげんを3本取り出した。
「や。全然ダメって訳じゃないから。ただ青臭いのはやっぱちょっと……」
「まあ、騙されたと思って食ってみろ。どうしても無理なら、俺か周が食うから」
さっきのボウルとは違う方の溶き粉にいんげんをくぐらせて、油に入れる。眉を寄せて綾が見つめていると、今度はブロッコリーを3房、同じように揚げ始めた。
「蒼……。いんげんならまだいいけど…それ、ブロッコリーだろ。絶対、無理」
思わずゲンナリして呟くと、蒼史朗は笑いを噛み殺し
「周は大好きだぞ。ブロッコリーの天ぷら。美味いから。とにかくまずは食ってみろ」
カラリと揚げあがったいんげんとブロッコリー。どちらも薄衣で緑が鮮やかだ。
綾はいんげんをそっと摘み上げ、ため息をついた。
「あやくん。美味しいですよ」
くふくふ笑っている周と顔を見合わせ、綾は苦笑しながら恐る恐る齧ってみた。
サクサクッとした衣の食感の後に、いんげんのこりっとした歯触り。噛み締めるとじゅわっと瑞々しい甘みが口の中に広がる。
「あ……甘い。美味しい……」
口の中に変に残る青っぽさはない。筋も綺麗に取り除かれていて、すんなりと飲み込める。綾はちょっとビックリしながらブロッコリーも齧ってみた。
「あ。こっちもだ。青臭さ、全然感じない」
蒼史朗は得意気に鼻の上に皺を寄せて
「だろ?野菜嫌いが苦手な特有の青っぽさがなくなるんだ。自然な甘さが引き出されてすごく美味い」
綾は残りも口に放り込んでもぐもぐと咀嚼し飲み込んだ。
「すごいな。この俺がブロッコリーを美味いって思うなんて」
思わず感心して呟くと、蒼史朗の大きな手が伸びてきて、頭をくしゃっとされた。
「綾。おまえってほんと、素直だな」
綾は照れ隠しにむっとした顔になり、蒼史朗の手を振りほどくと
「ばか、やめろって。子ども扱いするの。同い年だろ」
唇を尖らせ蒼史朗を睨みつけると、蒼史朗はすごく楽しそうに声をあげて笑った。
「ちゃんと野菜、食えたからな。ご褒美にこれを揚げてやる」
そう言って蒼史朗が棚の奥から取り出したのは、深さのあるタッパーだった。
綾は拗ねていたのも忘れて、タッパーを覗き込む。
「何これ。肉?」
「鶏肉だ。もも肉とむね肉とササミ。ちょうどよかった。綾、どれが一番天ぷらで美味いか、食べ比べしてみてくれ」
「へえ……鶏肉の天ぷらか。美味そうだな」
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