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第27話

目を開けると、周のまん丸の目が自分を見つめていた。綾はぱちぱちと瞬きをしてから 「あまねくん」 「あやくん。大丈夫?」 「うん。大丈夫だよ。俺、いっぱい寝てた?」 周は首を傾げて 「うーんとね。とけいのはり、2回ぶん」 それは短い針のことだろうか。だとしたら2時間か。深い眠りだったせいか、もっと長く寝ていたように感じた。 「そっか。もう、起きるよ」 綾が身を起こすと、周はおでこの上からずり落ちたタオルを受け止めてくれて 「蒼くんがね、あやくんもっと寝たいなら、ベッドのほうがいいなって」 綾は手を伸ばして周の頭を優しく撫でると 「もう大丈夫だよ。すごくスッキリしたから。これ以上寝ちゃうと、かえって疲れちゃうかも」 周はこくこく頷くと、身体を起こして立ち上がろうとする綾に手を差し出した。支えになってくれようとしているのだ。こんな小さな身体で。 綾は胸の中がじわっと温かくなった。 「ありがとう、あまねくん」 なるべく周に負担をかけないようにしながら、彼の優しさに甘えさせてもらった。 少しふらつきながら、ダイニングの方へ行くと、蒼史朗がキッチンから顔を覗かせる。 「起きたか、綾。どうだ?具合」 綾は周が引き出してくれた椅子に腰をおろして 「うん。もう大丈夫。ぐっすり寝れたから身体がすごく軽くなった」 「そうか。でも無理するなよ。横になりたかったらいつでも言ってくれ。遠慮はなしだ」 「ありがとう。そうさせてもらうよ」 綾がにこっと笑うと、蒼史朗はほっとしたように頬をゆるめた。 「なあ、綾。明日はおまえ、仕事なんだよな?」 洗い物を終えた蒼史朗が、布巾で手を拭きながら近づいてくる。 仕事。 その言葉に、綾は一気に暗い気持ちになった。 仕事をしたいのはやまやまだが、職場はなくなってしまった。 現実に引き戻されて、綾は内心ため息をつく。 ……仕事、なくなっちゃったけど……探さないとな。こんなこと、してる場合じゃないんだった。 「あ~……うん。明日は、仕事」 「そうか。体調いまいちならこのまま泊まっていけばいいって思ってたんだが……明日朝一で送ってやるけど、それじゃ間に合わないか?」 綾は驚いて蒼史朗をまじまじと見つめた。 「え?いや、それは悪いよ。勝手に押しかけたの俺なんだし」 蒼史朗は隣の椅子にどっかりと腰をおろすと 「遠慮ならしなくていいぞ。明日は俺の方は、いろんな届出で役所関係まわるだけだからな。おまえが仕事に間に合うように送ってやるよ」 「や……。でも……」 「正直な、今夜はおまえ、このまま帰すのちょっと心配だ。気を失うなんてよっぽどだからな。今から帰って、例の従兄弟さんはおまえの面倒看てくれるのか?」

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