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第28話
蒼史朗の質問に、また言葉が詰まった。
従兄弟……。岬。
あの男はマンションにはいない。もしいたとしても、自分の看病をしてくれたりはしない。
「あー……。従兄弟は、今いないんだ。仕事で……出張で……一週間ぐらい帰らないかも」
つかえながら、何とか答えを絞り出す。
蒼史朗は眉をあげ
「いない?……そうか。じゃあ今帰ってもおまえ1人なんだな」
「うん、まあ、そうなるね」
蒼史朗はにやっと笑って
「よし。じゃあ決まりだ。今夜は泊まってけ。明日仕事なら、朝送ってってやる」
「え……」
「遠慮ならやめとけ。おまえは俺らのことを心配してわざわざここまですっ飛んで来てくれたんだ。嬉しかったよ。そのお礼をさせてくれよ。な?」
笑いながら片目を瞑ってみせる蒼史朗に、綾は微妙に目を逸らして苦笑した。
「うん。じゃあ……お言葉に甘えて」
蒼史朗は満足気に頷くと
「風呂はどうする?や、熱っぽいならやめといた方がいいか。今な、2階の俺の部屋、今度始めるキッチンカーの資材で完全物置状態なんだ。使ってなかった客間、少し片付けてくるから、周の相手、してやっててくれ」
蒼史朗はそう言うと、綾の頭をくしゃっと撫でてとっととリビングから出て行ってしまった。
……もう……。ガキ扱いするなっての。
綾は蒼史朗に撫でられた頭に手をやり、心の中で文句を言ってみた。屈託なく笑いかけてくる笑顔。さりげなく触れてくる手。
蒼史朗は何の気なしにやっているのだろうが、いちいちドキドキしてしまう自分がめんどくさい。
「あやくん。大丈夫ですか?」
いつの間にやら周が傍らに来て、可愛らしく首を傾げている。綾は微笑んで
「うん。大丈夫。今夜、ここに泊めてもらうことになったけど……よろしくね、あまねくん」
「はいっ。あやくんといっしょ。うれしいです」
周はパァ~っと笑顔になった。
「ね、あまねくん。蒼史朗が言ってたキッチンカーの資材って、どんなやつ?」
綾が問いかけると、周はうーん?っと首を傾げ
「あのね。いっぱい、ダンボールできたの。そうくんにきいたら、天どんとか天ぷらをいれるんだって。あと、ふくろとか、おはしとか」
「へぇ……。そっか。持ち帰り用の器とかパックだね」
周はこくこく頷くと
「そうくんのおへやね、パンパンになっちゃったの。こーんな大きい箱がいっぱいで」
周は両手を目いっぱい広げてみせる。綾は目を丸くして
「部屋が埋まっちゃうくらい?それはすごいな」
「あやくん。見たいですか?」
周の質問に、綾は思わず笑って
「うん。見てみたい」
周はにこーっと笑うと
「じゃ、こっち、きてください」
綾の手を引っ張った。
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