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挿話「岬と綾」14※

呼吸が乱れてなかなか元に戻らない。 心臓がドキドキして震えも治まらなかった。 「どうだった……?」 岬が吐息で耳元を擽るように、そっと囁いてくる。 綾はビクッとして、しがみついている岬の腕をぎゅっと掴み締めた。 いつのまにか、乗り上げていた膝から降りて、隣りに座った岬に、横から抱き締められていた。 「イッちゃったな、綾」 妙に色気のある岬の低音ボイスで、揶揄うように囁かれて思わず首を竦める。 ……言うなっ……ってば 信じられない。岬に手で直接扱かれて、抵抗する暇もなくあっという間にのぼりつめていた。自分のペニスが溶けてしまいそうなぐらい熱くなって、強烈な快感に為す術もなく翻弄された。嫌だとか、恥ずかしいとか、そんなことを感じている余裕もなかった。荒々しい奔流に押し流されるように、ただ岬の腕にしがみついてみっともなく喘ぐしかなかったのだ。 「いっぱい出た。やっぱ溜まってたね。ハンカチ、ドロドロだ」 知っている。呆気なく射精してしまって、それが断続的にバカみたいに長く尾を引いて続いていたのは、自分でも見ていた。 壊れてしまったのかと思った。自分の身体が。オナニーであんな風になったことは1度もない。 出してしまえば、急速に正気にかえる。 頭の中の白い霧が一気に晴れていくように、理性が戻ってきて、同時に激しい羞恥心が襲いかかってきて叫び出しそうになった。 「なあ、綾。どうだった?」 身体に顔を押し付けて何も答えられずにいる綾に、岬はしつこく問い掛けてくる。 どうだったも何もない。 身体がちゃんと答えを出しているのに。 綾は覗き込んでくる岬に顔を見られたくなくて、いっそう押し付けた。 恥ずかしいし、悔しい。 2度と岬と、顔を合わせたくないくらいだ。 「りょ~うくん?」 変な節を付けて、名前を呼ぶ岬の声は笑い含みだ。バカにしてる。 綾は縋りついた岬の腕に目一杯、爪をたてた。 「いたっ、ちょ、痛いって。おまえ、猫みたいだな。爪、痛いよ」 岬はちょっと怒った声を出し、まだ剥き出しのままの下腹部を掴んできた。 「……あっ、さ……触ん」 イったばかりのソコを強く握られて、綾は堪らず顔をあげた。 「っやだ、…っ触るな!」 岬の手首を掴んで、睨みつける。岬はふんっと鼻を鳴らして 「おまえが爪、たてるからでしょ。そんな可愛い顔して睨むなよな」 まともに目が合ってしまった。綾はドキッとして慌てて目を逸らし 「離してよ。手」 掠れた声で抗議した。 「どうだったって聞いてるんだよ?ちゃんと答えたら離してやる」

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