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「…ぃ …ぉい …おい …おいっ!!」
体を揺らされてハッと目が覚めた。
「…何?」
「担任が呼んでる!」
そう言われ顔を上げると、静かな空気の中クラスメイトが皆こっちに注目していた。
前を見ると、担任の横にうちの制服をきた知らない男が立っていた。
「…誰?」
悠貴に尋ねる。
「朝言ってた転入生だよ!」
あぁ、そう言えば…とやっと思い出す。
黒板には綺麗な字で「森春翔 」と書かれていた。
「なんですか?先生。」
「だから、君の隣1つ席が空いてるでしょ?そこに彼を座らせてあげてくれるかな?」
物腰の柔らかい先生がそういう。
「あ、いいですよ!」
そう言うと、転入生は長い脚ですたすたと歩き、どかっと隣の席に腰を下ろした。
先生は、安心したようにホームルームをたたみ教室を出ていく。
いつもはその瞬間クラスがざわめき経つのに、今日は変に静かな間が流れる。
やべぇ、寝てたからなんも聞いてなかった…
俺はとりあえず隣を向く。
「どうも初めまして!柳葉玲 って言います。わかんない事あったらなんでも聞いてくれていいから。よろしくね?」
そう言うと、転入生は横目でジロっと俺を見ただけでまた正面を向き直った。
「あれ…?」
よく分かんない転入生の反応に間抜けな声が漏れる。その声が静かな教室にはよく響いた。
一瞬の間を置いて、またいつも通り…いやいつも以上に爆笑が起こった。
四方八方からの笑い声に囲まれる。
皆が俺に近寄って肩を組んだり背中を叩いたり頭を撫でたりしながら爆笑している。
「なになになに…?俺、なんか変なことした!?」
「…っ、いや、おまっ…よく普通に声かけれんなぁ!もしかして、森春翔知らねぇの!?」
「いや、知ってるよ!だから転入生だろ!?寝てたけどそれぐらい黒板見ればわかるし!」
そう言うと、またさらにでかい笑いの渦にクラスが包まれる。
訳が分からず、微妙な顔で悠貴に助けを求めると笑いすぎて涙を浮かべた顔で言った。
「森春翔って言ったら、ほら人気のアイドルグループのさ、PRISMってグループの5人のうちの1人!」
「PRISM…?あーなんか、聞いたことある気がする…??」
と言うと、
「いや、玲、PRISM知らねぇのかよ!」
「おま、マジか!」
と周りから次々に突っ込まれる。
そんなにおかしい事かよ!俺は、朝は朝練があるし夜も練習の後バイトいってすぐ寝てるからテレビとか見てる暇ないっつーの!と心の中で突っ込むが口に出すとまた笑われそうなので言わない。
「森春翔は、グループ5人の中でも演技派で唯一ハリウッドデビューしてて、しかも歌も上手いし、ダンスも出来る。非の打ち所のない完璧イケメンだって妹が言ってたぞ!」
と、言われても俺からしたらただのクラスメイトだし!芸能人とか言われてもわかんないし!
と口をとんがらせる。
「あー!もうっ、笑うなよ!悪かったよ。森…なんか」
「お前、君ぐらいつけろよ!」
とまたツッコミが入る。
「悪かったよ、森君!でも、転入したばっかりだしわかんない事あったら聞いてくれていいから!ほら、これでいいだろ!」
周りに聞こえるようにわざと大きな声で言う。
すると隣から低い声が聞こえてきた。
「俺…今日は仕事あるから、顔出しただけ。もう帰るし。」
えっ…?
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