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次の日、森は学校に来なかった。
なんでも、朝から仕事があると言っていた。
朝練で6:30に部屋をでる俺と同じタイミングで部屋を出て、迎えの車に乗って行った。
帰りはそんなに遅くならないらしい。
流石トップアイドル。多忙だな…
なんて、いかにも庶民らしい感想が頭をよぎる。
そんな中、俺はいつも通り、授業を受け放課後の予鈴と共に席を立った。
「悠貴、部活行くぞ。」
エナメルバッグをからいながら、前の席の悠貴に声をかける。
「あぁー、ごめん玲。ちょっと先行ってて。」
「何?なんかあるの?」
「いや、今日の課題朝出せなかったからちょっとダッシュで出してくる。練習には間に合わせるから。」
そう言う間に、猛スピードで教室を出ていく。
悠貴は、いつも課題を学校に来てから終わらせるのでたまにこうして、課題をだし遅れることがある。
何度も、部屋でやれと言っているのだがなかなかやってこない。
俺は、仕方なく1人で体育館に向かう。
2年の教室は3階にある。
外にある体育館に行くには下駄箱に一旦行って、靴を履き替えて行くしか方法はない。
俺は、教室の近くの階段から2階に降り1階に行く階段に差し掛かろうとした時だった。
「稲葉玲くん。」
背後から自分の名前を呼ぶ声がして振り返る。
しかし、そこに知った顔はいなかった。
俺は気のせいかと思ってまた階段を降りようとしたところで、今度は右肩を思いっきり掴まれた。
「っ…ぅ」
俺は痛みに少し顔を歪める。
振り返った所に立っていたのは、知らない顔の男だった。
「柳葉玲くん。」
男が少し興奮気味で俺の名前を呼んだ。
かなり鍛えられたガタイのいい男で、顔は黒く焼けいて、からっているカバンには、ラグビー部と書かれてる。
上靴の色が赤色ので、高3だろう。
「なんですか?」
俺は、少し不機嫌に手を振り払いながら言った。
しかし、男はそんな事微塵も感じていないようで無言で俺の手首を掴む。
「ちょっと、付き合ってくれる?」
「はぁ?俺、今から部活なんですけど…」
俺がそう言っても、全く聞こえてないようで手首を持ったままグイグイ引っ張られる。
反発しように、あまりに力が強くて逆らえない。
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