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でも、その選択を最後に残った理性だけが止めた。
男としてこのまま見つかるのは屈辱だった。
それは決死の力で体を起こしてなんとか身だしなみを整えた。
腰から来る鈍い痛みが、これが現実だと知らしめる。
俺はエナメルバッグをからい、どうにか歩いて教室を出て、元来た階段まで戻る。
もう放課後になって随分時間が経ったせいか生徒の姿はなかった。
階段を1段ずつ降りると、中に残った液がドロっと太ももを伝って流れてくる。
けど、1度止まれるほど余裕はなかった。
なんとか1階まで降りて下足箱に行くと、後ろから左肩を軽く掴まれた。
「ひっ…」
俺は驚いて手を払いながらばっと勢いよく振り向くその勢いでバランスを崩して尻餅をついた。
「ご、ごめん、そんな驚くと思わなくて…」
顔を上げると悠貴が立っていた。
「悠貴…」
「いやぁ、課題出しに行ったら先生に雑用押し付けられてさぁ…てか、玲はこんな時間までなにやってんの?」
悠貴が不思議そうに首を傾げる。
「えっと…」
「ってか早くたちなよ!そんなとこへたり混んでたら目立つからさ。」
そう言って右手を差し出してくる。
俺はその右手に小さく悲鳴をあげて仰け反った。
怖い…
相手が悠貴だと頭では分かっているのに心は恐怖心を拭えなかった。
「どうかした?なんか、さっきから変だし、顔色も悪い…」
パンっ
俺の顔に向かって伸びてきた悠貴の手を思いっきり払い除ける。
「やめて…」
「玲…?」
俺は、ガっと立ち上がって急いで靴をはきかえる。
そしてそのまま、今できる全速力で走り出した。
後ろから悠貴の声が聞こえたけど、返事をする余裕もなかった。
寮まで走り、エレベーターを待てずに階段を駆け上って自分の部屋に入る。
そのまま玄関に靴と荷物を投げ捨てて、トイレに駆け込む。
そのまま勢いよく、便器を覗き込むようにして倒れ込んだ。
「うっ…」
喉から酸っぱい物が押し寄せる。
どんだけ出しても、吐き気は続いた。
最後の方は胃の中が空っぽになって胃液まで吐いた。
ついには吐くものも無くなり力尽きて、トイレの中でようやく意識を手放した。
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