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まずは上から順にと、黒髪を濡れ布巾で撫でていく。 ダンケルハイトが使用人から避けられているのは、裏切り者であることだけが原因ではない。 この黒い髪も、その一因になる。 ダンケルハイトの母親はこの国の人間ではなかった。 旅芸人として訪れた異国の踊り子を、彼の父親が妾に迎え入れたのだ。 その妾との庶子がダンケルハイトである。 この国の人間は皆一様に金髪に碧眼である。 一目で異国の血が入っていると分かるダンケルハイトは、幼い頃から周囲の誹りを受けてきた。 新米騎士たちが集まる場で初めて出会った時も、友は周囲の注目を浴びながら遠巻きにされていた。 組み手の相手が見つからない様子を見かねて、私から声をかけたのだ。 「お前は俺の見た目が嫌じゃないのか?」 「剣の実力とは無関係だろ」 それが、二人が最初に交わした言葉であった。 それからダンケルハイトはやたらと私に突っかかって来るようになった。 出生の苦労故に性格が曲がってしまったのか、ダンケルハイトは皮肉や嫌味をよく言う男ではあったが、己に心を許していると感じることができる程度には素直であった。 そのまま当たり前の様に共に騎士として成長し、気が付けば騎士団の中でも優秀と称される部隊に配置され、それを任される地位に並んでいた。 騎士として正式に剣を受け取った日からずっと同じ紋が彫られた剣を掲げ続けてきた存在。 二つの剣は何時までも並んでいるはずだと私は信じ切っていた。 だが同時に、ダンケルハイトがその生まれ故に周囲に裏切られ続けてきたことも知っていた。 彼が国を裏切るには、十分な要因が多すぎた。 「……おっと」 過去を思い起こしながら手を動かしていると、すぐに上半身を拭き終わってしまった。 ここも拭かなければならないと、ダンケルハイトの股間を思わず覗き込んでしまう。 「その……汚れをとるためだからな」 「……」 眦を下げながら、他意は無いことを言外に伝えて股間に手を伸ばす。 やはりダンケルハイトは大人しくしており、いっそ協力的に足を軽く開いてみせる。 (あの矜持が高く、口を開けば言葉の棘を飛ばしていたような男が、己に身を任せて大人しく股を開いている) 私の中でよからぬ熱が生まれようとしたが、それを押し殺して務めて義務的に股間を拭ってやった 「な……」 思わず声を上げてしまう。 布で出来る限り柔らかく拭っただけなのだが、ダンケルハイトの性器は勃起していた。 その変化を無い物として更に優しく接するのだが、ついには腹に着くほどに起立し、汁を零し始めてしまう。 考えてみれば、ダンケルハイトは長く投獄された上に生死の境をさ迷っていたのだ。 ようやく休める状況になった所で他人に触れられれば、この状態になるのは仕方のないことなのかもしれない。 そう己に言い聞かせながらも横目でダンケルハイトの顔を見れば、耳まで真っ赤にし、潤んだ瞳を悔しそうに伏せている倒錯的な表情がそこにはあった。 友のこんな顔は知らない。 あの時も、ダンケルハイトは不敵に笑っていたのだから――

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