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12-2 俺、男はマジで無理と友達が言った
御坂が乾いた声で笑う。
「普通ねぇ……それってどんなの? 將梧 は普通?」
う。俺のは普通じゃない……よな。
「お互いに好きで。だから、一緒にいたいしセックスもする。ほかの人とはしないし、相手にもしてほしくない……感じ?」
あー言ってる自分が違うし!
深音 とは偽装だし。
涼弥が好きなのに深音としたし。
そもそも。
涼弥とリアルにしたいかって聞かれても、迷わずイエス!って答える自信ないし……。
ダメだ。説得力ないわ俺。
「とにかくさ。好きな相手が傷つくのは嫌じゃん? 自分が傷つけてるならもっと嫌っつーか、つらいだろ」
「ごめん……俺が悪い」
「いや。だから、俺に謝るなよ」
ちょっと暗い沈黙。
「將梧はあれから彼女と楽しんだの?」
話は明るい話題へ……って。御坂の気遣いかもだけど、正直微妙。
「あー……うん。まぁ……」
「深音ちゃんだっけ? 仲良くていいな。ちゃんと大切にしてるんだね。えらいよ、將梧は」
ふ……複雑な気分。
仲いいし大切だけど……御坂が思ってるのとは全然違うもんな。
傍からだとそう見えるのか、やっぱり。
「正親 もさ。海咲 ちゃんに会った日は、ワイワイみんなと遊びはしてもセックスはしないんだ。あいつの自分ルール。不可解だよ」
「なんとなくわかる」
「そう? 凱も誘われても断ってたよ。俺みたいに貞操観念ない男だと思ったのに。ノリは軽いけどフリなのかも。面白いタイプではあるよね」
「確かにちょっと変わってるよな」
セックスに恋愛感情は不要でも、理由は必要な感じだったよね、凱は。その理由は、単にやりたいって性欲じゃなく。
御坂とはまた別の人種だ。
「おはよー」
新庄と玲史が一緒に教室に入ってきた。ほかにも数人が後に続く。ようやく活気が出てきて、いつもの朝の雰囲気に近くなる。
「おはよー、將梧」
「おはよう」
目が合った玲史に挨拶する。
「御坂くんも。おはよー」
「ああ、おはよ……」
名指しで声をかける玲史に、御坂は素っ気なく返す。慣れてるせいか気に留めず、玲史は新庄の席で何やら楽し気に話し出した。
それを横目に、小さく溜息をつく。
「お前、ほんとゲイのヤツらに冷たいよな。友達やクラスメイトは何の害もないだろ?」
「愛想よくして期待されても困るから。俺、男はマジで無理」
「何かあったのか?」
御坂は外部受験組だから、ここに来て初めて恋愛対象として見られる経験をしたんだろう。告られて片っ端から断ってるのは知ってるけど、誰かに襲われた噂は聞いたことなし。
「去年つき合ってたコがさ、女と遊ぶのは嫌だけど男ならかまわないって言ったんだ。男とやりたいなら仕方ないからって」
「へぇ……」
それは理に適 ってる……のか?
いや。やっぱり恋人がほかのヤツとっていうのは気分悪い。おもしろくないはず……だよな?
「で、試してみた」
「え!?」
「無理だった。タチネコどっちも」
困惑気味の俺に、視線を落とす御坂。
「試すって……誰と……」
「俺、わりとこだわりないんだよね。やる相手に」
視線を俺に戻し、御坂がへらっとした笑いを浮かべる。
「昨夜寝たのも、街で声かけてきた知らない女だし」
「やめろよそれ。いつか痛い目見るぞ」
「そうだね。まぁ、だからさ。男かぁって考えた時も、学校のヤツ以外で面倒にならなそうな人間なら誰でもいいかなって。知り合いに頼んで紹介してもらったんだ。ストップかけたらやめてくれる自制心のある、タチの男」
「そんな都合のいい男いたのっていうか……お前、よくネコから試せるな」
「だって自分が何もしなくても進むだろ? どうやるか知らないし、俺が抱くほうが難しそうだったからさ」
「そう……かな」
男未経験だと、抱かれる方がハードル高い気がするのは俺だけ?
尻の穴にアレ突っ込まれるんだよ? 痛そうだし、怖いじゃん!
腐男子で2次元の濃い描写見慣れてる俺がそう思うのに。
チャレンジャーだなー。
「結局、ポジションなんか関係なかった。エロ目的で触られるだけで鳥肌と悪寒。相手が善人でラッキーだったよ。じゃなきゃムリヤリ犯されて、人生変わってたと思う」
「そんなに嫌悪感あったら、まぁ……男は無理か」
なんかちょっと……不安。
過去にやられそうになった時、俺も恐怖と嫌悪で心底ゾッとしたけど。
自分の意思でやるなら大丈夫なはずって思ってたよ……自分の意思でやろうとしたことないくせに。
甘いな俺。
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