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12-3 男と出来るか不安

「で、もうひとり試したんだ。今度はタチで」 「は……!?」  御坂の言葉に、再び驚く俺。 「鳥肌だったんだろ? 何で……?」 「信頼出来る相手ならまた違うかもしれないし。中学で仲のいい友達にゲイのヤツがいたんだ」 「その友達と?」 「卒業する時、好きだって言われてさ。びっくりしたけど気持ち悪いとか全然なくて。恋愛対象には見れないごめんって言ったら、伝えたかっただけだからって」  御坂が深い息を吐いた。 「友達として今まで通りっていうのも酷な気がするし、高校は別だし。2ヶ月くらい連絡も取り合ってなかったんだけど……偶然会っちゃって」 「だからってお前……」 「頼むつもりはなかったよ。気持ち利用するのはさすがに気が引ける。俺はまだ友達のつもりなんだからな。でも、その時ちょっとへこんでて。理由聞かれて話したら、僕と試してみればってなって……そういうことにね」 「ダメだったのか」 「鳥肌も悪寒もほとんどなかった。あいつのこと、友達としてでも好意はあったから、嫌じゃなかったよ。だけど……勃たなかった。あいつが何してくれても。だから。もう俺、男は絶対無理ってわかったんだ」 「そうか……」 「傷つけた」  眉間に深い(しわ)を寄せて、御坂が呟いた。 「もし、俺があいつを抱けたら、つき合う可能性もゼロじゃなくなる。言わなかったけど俺自身そう考えたし、期待もさせたはず。なのに、全くダメだったことでひどく傷つけたと思う。もう、男に好かれたくない」 「御坂……」  その友達は、傷ついたとしても試してよかったと思ってるよ……なんて。俺が言うまでもないね。  相手も御坂もきっと後悔してないし、ちゃんとわかってる。どうしようもないことだって。  性指向には……逆らえないよな。 「ゲイが嫌いなんじゃないよ。俺をそういう対象に見るヤツと距離を置きたいだけ」 「ん。わかった」  納得した。  で、さらに不安になった。  好きな相手の……涼弥の気持ちがどうかはすっ飛ばして。   男とつき合う自信がないまま、涼弥とつき合うとするじゃん?  いざ、セックスしましょうって段にきて、やっぱ男は無理。俺お前とは出来ないわってなったら……傷つけるよな。  逆も傷つくけど。  この半年間うやむやにしといた涼弥への気持ちを、深音(みお)に指摘されて認めて。  認めてからした深音とのセックスで、心だけじゃなく身体にもリンクしてるのを自覚して。  そして。  涼弥が俺を……って紗羅に言われたことで、一気に現実味を帯びた。  涼弥との恋愛が。  一晩寝て起きたら、無理だと思ってた妄想まで脳内に浮かぶ始末。  たった1日足らずでこの変化。  何故。何で。どうして……俺の左脳が追いつかない。 「おはよう、昨日はお疲れ」  御坂の声で振り向くと、(かい)と佐野がいた。  おはようの挨拶を交わしたあと。  佐野が、ニヤリとした顔を俺に向ける。 「將梧(そうご)の彼女、駅で会ったよ。ニコニコしてすげー元気そうだったぞ。あれからやって満足させたんだな」  声デカいっ! 「あー元気そう……なら、よかった」 「何だよ。お前のほうは元気ねぇな。頑張り過ぎたか?」 「声下げろよ。全然違うから。お前は何でそんなご機嫌なんだ?」 「学祭。海咲が俺と回ってくれるって」  あ。ほんとに幸せそう。 「へーやったな」 「だろ? 早くテスト終わんねぇかな。さすがに暫くは遊んでる暇ねぇわ」 「じゃあ、来週また行こうよ、昨日の店。ナンパ待ちの女多いから効率いいし」  御坂の誘いにOKする佐野。 「海咲ちゃんとうまくいきそうなのに、女遊びするのか?」 「だからだよ。大事なとこでがっつかねぇように」  あー……俺の質問の意図と佐野の答えが噛み合ってないね。 「そっか……」  だけど。  好きな相手がほかにいてもセックス出来るってとこは、俺も同じなわけで。  さらに、御坂の話聞いて思っちゃったんだよ。  俺も男と出来るか試しといたほうがいいんじゃ?……って。  おまけに……。 「お前、本物の彼女いんじゃん。いい女だったねー。ねえちゃんも」  意味深な瞳で笑みを浮かべる凱。 「うん。まぁ……あ、紗羅のフォローありがとな」  マズい。  紗羅が昨夜言ったことで、ウッカリ妄想しかけたの思い出す。  凱に慰められることを……。  嫌悪感が湧かないのがマズい。  知り合って僅か1日足らずで、安心感と信頼を与えられちゃってるのもマズい。  そして何よりもマズいのは、俺が望めば現実になり得ることだ……冗談でなく。 「お前のねえちゃんだからねー。ほんとに必要なら相手するって言っといてよ」 「一応な……」  紗羅よりも、俺がお前のこと必要とするかもよ?  なんて、心の中で呟く俺。  自分が怖い時って……どうすればいいんだろうな。

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