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25-2 説明のランチタイム
ギリギリで間に合った4限の英語が終わり、凱 と御坂に話を聞いてほしいと頼み。さっさと購買で昼飯を買ってきて、ランチタイムを開始した。
食べながら、最初にホテルの件を説明。和沙が形だけのつき合いを頼んでたことも加えた。
「一緒にいたのが和沙なら、何もしてないかもって……だから涼弥に聞いて確認したんだ」
「彼氏のフリしてもらうのに杉原ってのはわかるんだけどさ。しつこい男につきまとわれてるとかなら、あの強面と迫力だし。でもそれ、杉原に何かメリットある?」
御坂が疑問を口にする。
「弱みでも握られてるのかな」
「何で引き受けたのかは知らない。でも、嘘じゃないと思う。和沙と何もなかったのも」
「將梧 が言うならそうかもしれないけど。どんな理由でも、男とホテル入ったんならやられても文句言えないだろ。そのコ、本心は杉原とやってもいいと思ってるか、よっぽど信用してるか……だよね」
腑に落ちない様子の御坂。
「杉原って、やっぱりゲイなんじゃない?」
「涼弥は……」
ここまで話しちゃってるんだし、御坂には言うか?
目を合わせた凱が頷いた。
「あいつ、將梧が好きなの。だからゲイかもねー」
「え? じゃあ二人……」
「將梧が告ればうまくいくんじゃん?」
御坂が俺を見つめる。
「だから、凱と試したのか」
「うん」
「納得。だけど、凱とセックスしたって杉原が知ったら……マズくない?」
「俺がしたくてしたんだからさ。必要なら話すつもり。怒るなら、矛先が凱に向かないようにするよ」
御坂が凱に視線を向ける。
それは無理だろって同意を求めるような顔で。
「將梧の好きにするで、俺はかまわねぇの。あー昨日言うの忘れてたけどさ。やったけど突っ込まれてねぇって言ってやれよ?」
「そうだね。杉原にとっては、それがせめてもの救いだな」
「は? 何で?」
途中から自分に向けられた凱の言葉を御坂が肯定するも、俺には意味不明だ。
「俺にとってはだいぶ違うけど、涼弥にしたら同じことなんじゃないの?」
御坂がまた俺を見つめる。
今度は、ちょっと知識の浅い子に同情するような表情で。
「ほかの男とセックスしたってショックも、將梧がまだ処女だってわかれば和らぐだろ」
「処女って……俺、男じゃん?」
「お前のケツの穴に挿れんの、自分が初めてなら涼弥は嬉しいんじゃねぇのってこと」
「あーそういう……」
ダイレクトに表現されて、なんか恥ずかしくなってきたよ。顔が熱いわ。
「いいな。楽しみだね」
「やる時は、あいつにがっつくなって言わねぇと。お前がキツイぜ」
経験豊富な二人に、あたたかい眼差しで見られ。
あらためて、自分が恋愛に関する心の機微に疎いって実感する。
俺が自分以外の男とセックスしてたら、涼弥はおもしろくないだろうなとは思ってたけど。
自分が初めての相手だと嬉しいって発想はなかったよ。
そういうもん?
みんなそう?
実際、初めてする相手を特別に考えてる人って多いのか?
もしかしたら、たぶん俺……その頃すでに涼弥を好きだったかもしれないのに、抵抗なく深音とした。深音も、先輩が好きなのに俺とじゃん?
涼弥だって。悠以外にあるのか知らないけど、俺が初めてじゃないしな。
そもそも。
それ、初恋人にしか不可能だろ。
好きな相手と初めてセックスしても。別れて。次に好きになった相手とは、セックス自体は初じゃなくなるよね?
でも。
その相手との初めてはあるし、3度目が一番心に残るかもしれないし。こだわらなくても……相手にとって自分が最高なら、それでいいじゃん?
初めてに価値を見る人がいるのは、理解出来る。
でも……。
俺は、初物だからっていうんじゃなくて、俺自身に価値がある人間になりたいよ……涼弥にとって。
「結局さー、好きって言ったの?」
「それなんだけど……」
凱に問われて、本題に入る。
「俺たち物理室の上の、屋上出る手前のとこで話してて。ホテルの話から、ゲイなのって聞いて……男とやったのかって聞かれて」
一度、大きく息をついた。
「答えないでさ。涼弥も俺も。で、キスされた……ていうか、俺も夢中になった」
凱と御坂が無言で俺を見る数秒が過ぎて。
「やるじゃん、あいつ。よかったねー」
「じゃあ、うまくいったんだ?」
「それが涼弥のヤツ、ごめんって言って……逃げちゃって」
あったことありのままと、俺の2択の考えを話すと。
「お前より全然余裕なかったんだろ。やめろって言われるまで、そこがどこかも忘れるくらい。頭と身体冷えればわかんじゃん?」
「好きな相手が積極的になったからって、引きはしないよ。まぁ程度はあるけど。キスだけでファスナー下ろしたりしてなきゃ大丈夫。將梧が理性保っててよかったね」
概ね、俺の考えと同意見を得て。
「3限終わってA組行ったら、いなかったんだ。涼弥は具合悪くて帰ったって……これ、どう? 俺から逃げる以外の理由、思いついたら教えて。お願い」
今の状況を二人に伝え、新たな意見を求めた。
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