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30-6 つき合いスタート

 動揺して身体をカタくする俺を、涼弥が抱きしめた。 「俺のセリフだろ。將梧(そうご)。つき合ってくれ」 「なん……変なリアクションするな!」  ホッとして力が抜ける。  紛らわしい動きヤメテ! 一瞬、時間止まった! 「ごめん……嬉しくてよ。夢みたいだ」 「現実だってば。夢ならお前、もっと好き放題してるんじゃないのか?」  すぐ前にある涼弥の目が、恥じ入るように逸らされた。  おい。  ほんとにお前、夢っつーか妄想の中で……俺に何してるの? 何させてるの?  聞くのも怖いからスルーだけども。 「リアルは……飯作んなきゃな。で、食って、のんびりテレビ見て。風呂入って……一緒に寝る」 「ここでか?」 「さすがに狭いか。フトン敷くよ」 「いや。狭くていい。お前と一緒に寝たい」 「うん……俺も」  全く照れない涼弥を見つめ、照れずに微笑んだ。 「涼弥。俺たち……つき合ってる、でいいんだよな?」  『つき合ってください』に返されたのは、『つき合ってくれ』……二人の望みは同じ。 「ああ。お前は俺が守る」 「うん。俺も、お前を守るよ」  チュッと唇に触れ、涼弥の腕を解いて立ち上がる。 「下行こう。チャーハン、お前も手伝ってくれるんだろ?」 「ああ。大したことは出来ないが……一緒にやりたい。何でも」 「ん。うまいの作ろうな」  ベッドから先に下りて、涼弥が俺を見上げる。 「將梧。あとで、もう一回……いいか?」  ジッと。  すがる感じの濡れた瞳。  涼弥こそ……その瞳でそう聞くの、ヤバいよ? 「あ……フェラか? お前、まだ足りてなさそうだったもんな。いいよ。お前のこと、満足させたい」 「違う。俺がする」 「え……」 「お前をもっとイカせたい。喘いでほしがるお前、すごくエロかったぞ。もっと見たい。思い出すだけで勃っちまう」  涼弥……それ、俺に言うのって……なんか、すごく……素直っていうか。あけっぴろげだけど……。  ねちっこく焦らす攻めの心理、まんまじゃん……!    わかるよ、その気持ち。わかるけどさ。  今日は、そんなエロ前面に押し出さないでソフトにいこう?  ベッドから下りた。  今度は俺が涼弥を見上げる。 「骨、治ったら。思い切りお前のことほしがるよ。今日は……適度にな」 「……キスはいいのか? いくらでも」 「いい。お前にフェラするのも。俺には……」  熱っぽい涼弥の視線を受け止めて。 「あーじゃあ、もう一回だけ。それで十分満足」 「わかった」  涼弥が唇の端を上げる。  なんか、らしくなくニヒルな笑み。  もう一回……オーケーしたの早まったか? 「早く飯食おう」  笑顔で言う涼弥と、キッチンへと向かった。  チャーハンは、簡単で便利な料理だよね。  解凍したご飯と、卵に玉ねぎ。あとは適当にあるもの入れればそれなりのボリュームになる。  俺がひとりで作れる、数少ないメニューのひとつだ。  手伝ってくれた涼弥はというと。  玉ねぎにやられて涙が止まらず、即退場。  汁が目に入るわけじゃなくガス化した成分が目や鼻に入るから、その場にいるのもつらそうで。  俺も目にしみて涙出るけど。慣れてるせいか、そのまま料理出来る。  冷蔵庫にあったウィンナーとベーコン、シラスを入れて。あと、アスパラもな。  沙羅との二人分の2倍くらいの量になっちゃったよ。  まぁ涼弥は身体デカいし、このくらい食うはず。 「出来たぞ」  ダイニングテーブルにチャーハンの皿とお茶のコップを2つ置き、ようやく目と鼻が落ち着いた涼弥と向かい合って席に着く。 「役に立てなくて悪かった」  ちょっぴりシュンとした涼弥に微笑んで。 「いいよ全然。くしゃみとかしたら、肋骨に響くだろ。まだ、三日目だし。シラス入れたから、いっぱい食って早く治せよ」  いただきますと手を合わせ、俺たちはチャーハンを掻き込んだ。     うまいと言ってチャーハンを残さず平らげた涼弥は。待ってろと言われ、おとなしくソファでテレビを見てる。  とりあえず、口に合ってよかった。  キッチンを片づけて、水を手にリビングへ。 「薬、持ってきたか? バッグ取ってくる」 「いや。自分で……」 「遠慮するな」  部屋から涼弥のバッグを持ってきて薬を飲ませるも。大丈夫だと言い張り、鎮痛剤は飲まなかった。  今、7時半になるところ。まだ夜も早い時間だ。   「着替えも出しとけよ。1時間くらいのんびりしたら風呂入って……」  入って……またゲームするか? 映画のDVDでも観る? まったりお喋り?  いつもひとりでやることを二人で……か。  何しよう?  明確な何かがないと、エロ方面にいっちゃいそう。  何しててもそっちいく可能性はあるけどさ。 「將梧。風呂は一緒に入るんだよな?」 「え!?」 「お前と入りたい」 「でも、ジムの風呂みたいに広くないし……」 「かまわない」 「けどさ……」 「背中、うまく洗えない」  そ……れ、言われたらNO出来ないじゃん……!  ヒビのせいで、後ろ洗うのキツいっていうんだろ?  俺に洗ってって……。  何かわいいこと言ってんだ……!     うーくそっ……拒否れない。  風呂場なんて狭いとこで素っ裸で。  身体は無防備で。  心は……そもそも守ってないし。 「ダメか?」  涼弥の瞳に、策略めいた黒さはない。  だからこそ、タチ悪い……よね?  首を横に振る。 「一緒に入ろう。せっかく二人だしな」  涼弥が目を細めて口元をほころばせた。

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