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42-1 翌朝

 翌朝。  涼弥と初セックスした翌朝。  目覚めて普通に起き上がろうとして、痛みに声を上げた。  いッ……て!  うー……イタイ……一晩寝れば治る予定だったのに……マジか。  (かい)は次の日、平気そうだったじゃん?  まぁ……慣れにだいぶ差があるし。相手は俺だったから。大きさ突く強さその他の負担は、涼弥に抱かれるより少なかっただろうけども。  マズいな。  うちの学園で、腰痛めてヨロヨロ歩きしてたら。  男に突っ込まれてやられまくったのバレバレ……!  ノンケでおカタい委員長の俺が……いや、それは仮面だから、もう剥げたってかまわないか。  選挙の候補者情報、性指向はバイにしたしね。    ただ。  誰とだって聞かれたら、クラス中に相手を知られるのは……必至。ヘタにはぐらかして、涼弥じゃない男にやられたってことになったら不本意だからな。  涼弥……は、一気に公にされてもいい……はず。  よし。  今日は涼弥との仲が公認になる日だ。  素の自分でいられるし。  涼弥も少なからず安心出来るだろうし。  マイナス要素は特にない。  まぁ、照れはする。腰痛い原因を思うと……初心だから俺。  普段より移動に時間かかるのを考慮して。早めに家を出なけりゃと、痛みを堪えて活動開始。  あ。歩くのは昨日より楽。  階段は……厳しいかな。  そして。  支度してキッチンに行くと、今日に限って両親がいる。この時間に顔合わせるのなんて、10日に一度くらいなのに。 「おはよう、將梧(そうご)。腰はどう? 治った?」  笑顔の母さんに、笑みを返す。  昨夜チラッと会った時に、腰を痛めたことは二人に言った。一歩ずつ時間をかけて階段上るところに帰ってきて、その姿を見られたから。 「昨日よりよくなった。なんとか平気だよ」  父さんは食べ終わってリビングで何か読んでる。沙羅は洗面所か。  簡単な朝食を取り、腰を上げる……ゆっくりと。ゆっくり動いたほうが痛む何かに響かない。 「洗濯したシーツ、部屋に持ってっておいていい?」 「あ、うん。ありがとう」  シーツ洗ったことと、腰が痛いこと……二つの事実を、母さんは結びつけてるかな?  どこかおっとりしてる人だから、そこまで考えないかもしれないけど……。 「將梧」  父さんが呼んだ。  この人は、感づいてる……だろうな。 「はい……?」  朝から眠気ゼロな瞳で俺を見つめ、父さんが口角を上げる。 「身体の調子が思わしくないのは、自分の管理不足ですか?」 「まぁ……そうかな。人のせいじゃない」  何の話の前フリか見えないけど、普通に答える。 「原因はわかってるし、すぐ治るはずだから」 「夜には楽になっていますよ」 「だといいけど……」 「涼弥くんは、責任を感じているようですね」 「は……!?」 「家の前に来ている。心配なんでしょう」 「え!? 前ってうちの?」  庭に目を向けるも、涼弥の姿は見えない。  父さんは、涼弥が通りを歩いて来るのを見たのか。  シーツ、腰の痛み、涼弥……で、確信した。俺たちがセックスしたこと。 「大事にしなさい。身体も、気持ちも」  そう言って微笑む父さんに頷き。残りの支度を急ぎ、家を出た。 「涼弥!」  いた。ほんとに。 「何で……」 「お前支えんのは、俺の役目だろ」  駆け寄りたいのに遅くしか歩けない俺に、すぐさま距離を縮めた涼弥が手を伸ばし。肩を貸してくれる。 「まだ痛いんだな。眠れたか?」 「ん。ぐっすり。痛みも減った」 「次は気をつける」  目を合わせて……ヤバ。ちょっとドキドキしちゃったよ。  昨日のセックス……思い出すな俺! 朝っぱらから! 「うん……俺も」  駅に向かって歩き出す。  そうだ。  はじめてやるのは、休みの前の日にしようって思ってたのに。うっかり木曜日にしちゃったじゃん。  こうなる可能性大アリって知ってたのに……不覚。 「慣れるまで、次の日が休みの時にしような」 「明日か?」  前を向いたばっかりの顔を、涼弥に向けた。  今! 慣れないアナルセックスで腰痛い俺に肩貸しながら、明日……って……黒いジョークか……!? 「今日はまだ無理だろ?」  と……うぜん……! 「明日はうちでもいいぞ。午後は誰もいない」  え……マジの誘い……なの?  今現在の俺、腰イタイイタイよ?  俺を見る瞳に邪気はなし。ほんのり熱こもってるけど。 「どうした? 嫌か?」  たぶん、無に近い表情の俺に、不安げな涼弥の声。  嫌って、どれを聞かれてるんだ?  涼弥の家、はいい。  やる、のもいい。  明日、は……。  出来るかなー。  腰治ってたらねー。  でも、また痛めるかもねー。  それはキツいなー。  治ってなくて痛いのに、突っ込む気はない……よね!? 「嫌じゃない。痛み引いてたら。あと、少し手加減してくれるならな」 「そりゃもちろん、治ってればだ。お前が歩くのもつらいとこやるわけないだろ。手加減は……するつもりでいるが……」  涼弥の眉間に皺が寄る。 「お前にほしがられちゃ、やめられる気がしない」  あー……。  俺か。俺がねだるからくれるのか。  そうだよね。  心底やめろって言えばやめてくれる……はず。  ほしいって言えば、くれる。  俺だってそうだろ。涼弥のほしいものは、あげたいもんな。  結局俺、昨日は何回イッたのか。  最高記録なのは確かだ。  はじめての感覚でコントロール不可だっただけ。  まぁ、快楽にはちょこっと弱い……のかもしれない。  けどさ!  涼弥だからじゃん……!?  好きだから……。 「ん。俺もやめられない。だからさ……」  涼弥に笑いかける。 「加減とか我慢とか……出来る時はしよう」 「そうだな。じゃあ、明日はがっつかないでゆっくりやるぞ」  やさしい笑顔で意気込む涼弥を見つめ、笑みを浮かべたまま固まった。  この腰の痛み。今日中に治ってほしいって、俺も願うべき……だよね?

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