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★55-5 俺以外、忘れろ

 アナルを攻める動きを緩め、涼弥が俺にキスした。  開いた唇を軽く喰み、舐めただけで離れ。 「焦らす気はねぇが、ゆっくりやるか。少しずつ気持ちよくすりゃ、怖いのとごっちゃになんねぇだろ」  そう言って唇の端を上げる涼弥を抱きしめたい。キスしたい。  届かないってわかってる手を、鎖いっぱいまで動かす。 「引っ張るな。痕ついちまう」  バンザイみたいに上げられた両手を涼弥が掴んだ。 「涼弥……中、熱い……」  安心感が増すと劣情も増してくる。  もともと、バックで焦らされてイッた続きを欲する身体だ。 「ゆっくりは、嫌だ……もう平気、だからさ」 「指、しびれてるんだろ。握り返してこねぇ……震えてる」  それは……。 「縛られてる、から……」 「トリハダも立ってるぞ」  それは……。  身体が怖がってる……のか。 「んッ……ふ、あ……ッ」  二の腕の内側を舐められて、ゾクッとしてくすぐったい。 「怖がっていい」 「あ……ひ……ッ、や、あ……あ、やめ……」  涼弥が鎖骨を舌で辿り、吸いついた。  3週間前。うちで、涼弥がキスマークを上書きしてくれたところ。  7ヶ月前。寮の部屋で、先輩にキスマークをつけられたところ……今みたいに、両手を縛りつけられて……。  嫌だ……やめろ……!  記憶とシンクロする。  涼弥なのに。  ナオ先輩じゃないのに。  嫌じゃないのに。  ムリヤリじゃないのに。  好きなのに。  恐怖で震える。  記憶と今の状況を、頭がうまく処理してくれない。 「や、あ……うッ……なんで……」 「思い出せ、將悟(そうご)。あの時、こうやって括られて痕つけられたんだよな」  涼弥の顔が涙で滲む。 「やられると思って、マジで怖かったんだろ。あと、何された?」 「あ……やめろ……」 「指突っ込まれたんだったな。こっちはもう挿れちまってるが……」  アナルの中でじっとしてたペニスが、奥をひと突きした。 「ッ……! あ、やッ……りょうや、あ……ッ」 「怖がれ。怖がりきっちまえ」 「ふ……あ……いッツ!」  涼弥が乳首を噛んだ。  そのまま口の中で転がすように舐めて吸って……恐怖に加わった快感に、身震いが大きくなる。 「あ、あ……や、だっ……んッあッ、やッ……こわ、いッ……やめ……あッ!」  怖い。  気持ちいい。  怖い。  この恐怖は過去ので……今は気持ちいいことしかされてない。  怖かった。  望んでないのにやられることが。  拒否しても強行されることが。  心を無視されることが。  傷つけられることが。  自分の無力さが。  怖かった。  未遂で済んだのは、ごく低い可能性の偶然のタイミングの幸運で……あの時、諦める絶望感を知った。  だけど今、これは……俺の意思だ。  俺は傷つかない。 「んんッ……はッ……あ、くッ……」  左右の乳首を交互に舐られ。チュウチュウと強く吸われ。先端をツクツク舌で刺激され。 「ッあ、ん……ふ、あッあ……ッ!」  たまに甘噛みされてジンジンする快感に、恐怖からじゃないゾクゾクが身体を巡ってく。 「ふ……ッあ……涼弥……もうッ……」 「気持ちよくなったか?」 「ん……いい、大丈夫……」 「指はまだ動かねぇか」  言われて、ギュッてしようとするも……うまく動かせない。  涼弥が片方の手を離した。 「ここはちゃんと勃ってるな」 「う、あッ! んッ……はぁ、くッ……!」  カウパーで濡れたペニスを軽く扱かれ、尿道口をグリグリされて。一気に襲う射精感に息が詰まる。 「怖くねぇか?」 「んッ、ないッあ……もうッなか……」  思いきり突いてほしい……! 「やってッ……ほし……おまえ、に……あッ、おまえがい、い……」 「……悪いが、杉原って言うまで……やめねぇぞ」 「ん、わかってるっ……りょうや……んっ……」  唇を塞がれて、熱い舌に口内をまさぐられる。 「ふ……はぁっ……んッ……ふ……」  涼弥の舌を吸い返す。上顎を舐めて舐め返されて、唾液をすする。  キスで疼いた腰を押しつけるように揺らすと、それに応えてペニスがグッと直腸内を奥へと進んだ。 「ッあ、く……ッ!」 「將悟……」  唇を離し。真上から、涼弥が俺を見つめる。 「何も考えるな。俺以外……忘れろ」 「う……んッ……りょう……や……あッ……」  上体を起こし、涼弥が俺の腰を掴んで浮かせた。  そして。  アナルの口までズルっと引き抜いたペニスを、一息で奥まで突き刺した。 「ひ、あ、ああ……ッ!」  衝撃で背中が反る。  視界に見慣れない天井とライト。  無防備に両手を頭上で縛られて。  涼弥が見えない……。  コワイ……!  脳ミソの襞に頑固にへばりついてる恐怖が、最後にあがく。俺の身体に悪寒を奔らせる。 「あ……やめ、ろ、うッあ、や、めて、くッああッ……!」  同時に。  俺の中で……俺をガツガツと貪る熱が、俺に快楽を叩き込む。  アナルの中をペニスが往復する。  直腸の粘膜はどこも気持ちいい。  腫れきった前立腺をカリが擦り上げる。  ペニスに直結する快感は、痛いくらい強い。  奥の行き止まりのすぼみを突くペニスは、その先の結腸に届く勢いで打ち込まれる。  激しくて凶暴で。どうしようもなくなく甘い。  涼弥だ……俺の……。  じゃなきゃ、こんなにならないじゃ……ん……?  あ……もう……怖くないや。  気持ちいー……だけ……。 「ッ……は……あッ……だか、ら……もっ、とッ……んッひア、アッ……ッ!」  アナルを突くリズムが速まった。  涼弥の声は聞こえない。何も言わない。わざと、声出してない。  これは俺が、自分で手放さなきゃならないものだから……だ。  もう、手放した。  もう、怖くない。  もう、忘れた。  もう、涼弥だけだ……! 「ッあ、イキそッう、あ……りょう、やッ、ンッア、アア……」  すがるものがほかになくて。  手首に繋がる鎖を握りしめる。  もう、指のしびれはない。  腰をガッシリと掴み直され、ペニスに中を抉られる。  ガツンガツンガツン……理性を刈り取られる。 「ッン、や、アアッイク……ッひア、アアアッ……!」  脳内スパークして。今夜何回目かわからない絶頂に、全身が震えた。

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