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第5話 ピンポーン
俺たちが住んでいるマンションは、俺たちが通っている高校から歩いて20分くらいの所にある。
薫がうちに遊びに来る……うっかり約束してしまったけど、こうなったら平常心でいこう。
無駄に意識しないで幼なじみとして過ごせばいいわけだ、よし!そう自分に言い聞かせた。
うちは7階、薫の家はひとつ下の6階で行き来は階段ですぐだ。
薫は我が家ではほぼ家族の枠なので、約束なしに急に来ても母さんも何も言わないし、そんな日は当たり前のように薫の分の晩飯も作ってしまったりする。
「ただいま〜母さん今から薫来るから」
「おかえり〜!かおちゃん来るなら、塩崎さんんも来るかな。今晩何しようかしらー」
「あのな、飲みすぎ注意〜!」
「大丈夫よー!ノンアル挟むからー!」
ダイニングの椅子に座り、笑いながらテレビを見てるのは、うちの母親の間宮景子 。
薫の母親、塩崎久美子 さんとは俺たちが幼稚園に知り合い意気投合したママ友だ。
ぶっちゃけこの親たちは飲んでばかりの飲み友だったりする。
ピンポーン
ちょっ早っ!!
まだ俺着替えてないんだけど!
「こんにちはー」
「かおちゃんいらっしゃいー!」
「お邪魔しまーす」
上は白のTシャツ、下は学校のハーフジャージという安定のらくちん姿でやって来た薫。
トコトコ真っすぐ俺の部屋へと直行し、背負って来たリュックサックをおろしてベッドへと寝転がる。
「あのな、ここ俺の部屋だぞ。俺より寛ぐなって」
「え、だって落ち着くじゃんここ。おっとお菓子持ってきたんだ。てっちゃんゲームやろうぜ」
リュックから俺の好きなお菓子を出し、ゲーム機片手にソワソワしていた。
無表情は変わらないけれど、テンションが上がっているのが良く分かる。
まぁ、どの辺でわかるのかと聞かれても説明はできないけど、薫の喜怒哀楽は幼なじみだからか惚れているからなのか自然とわかるのだ。
……はは、超ワクワクしてんじゃんこいつ。
こいつにとっては俺と一緒に過ごすことが楽しみで仕方ないんだから、露骨に拒むのも少し可哀想だ。
俺も過剰に意識し過ぎだよな……
「ちょっとまて、飲み物持ってくるわ。日替わりクエやろうぜ」
そう、いつもみたいに普通に遊べば問題ないんだ。
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