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第11話 補習
薫
「塩崎ーーー!待って!」
「……」
叫ぶような声が聞こえてきたので振り返ると、どこかで見たような見ないような知らない人が追いかけてくる。
「……」
「はぁはぁ、補習一緒に行こう……」
「……誰」
「え!誰って!酷いな同じクラスの吉岡だよー!吉岡聡 !」
「……」
??
「俺も補習呼ばれてんだよね。この間の小テストヤバくてもうマジ崖っぷちで」
「……そうなんだ」
俺、塩崎薫は数学の小テストの点数が思うように採れず、テスト前補習という名の居残りとなってしまった。
この居残りのせいでてっちゃんを迎えに行けなくなってしまい、激ブルーな気持ちになっている。
はぁ……明日も明後日も居残りだ……てっちゃんに行けないと連絡も考えたけど、居残りって理由結構恥ずかしいし、てっちゃんから迎えに来なくていいと言われていたから連絡することはやめた。
……最近のてっちゃんは俺にそっけないし。
そう感じつつもてっちゃんの教室には行く。
そっけないけど、てっちゃんは俺を見ると嬉しそうだから行く。
てっちゃんは俺のこと好きだし。
俺も好きだ。
小さい頃から一緒に育ってきて、お互いなくてはならない存在だと思ってる。
てっちゃんのことはなんでもわかるし知ってる。
「……」
「塩崎って、間宮と仲いいんだよな?」
「……?」
「あ、俺さ間宮と一年の時クラス一緒だったんだよね。塩崎、帰るときあっちの校舎まで迎えに行ってるだろ?俺知ってんだよね」
「……」
「あいつ最近また彼女出来たって?マジ羨ましいー!ヤルに困らないよなー!いいなぁイケメンは。って塩崎もう迎えに行ったら邪魔なんじゃねーの?あっちはラブラブなんだろ?」
「……ンなの、関係ないよ」
「へぇ……気にしないんだ。ま、補習の間行けなくて残念だな!」
「はぁ……補習面倒……」
「だよね。お互い赤点採らないようにがんばろうぜ」
……てっちゃんがラブラブだとしても、俺には関係ない。
彼女がいてもいなくても俺とてっちゃんが仲良しなのは変わらないし。
……てっちゃんの女好きは前からだ。
きっと女の子がいないとてっちゃんは生きていけないんだと思う。
だって彼女が途絶えた時がほとんどないとない。
ちゃんと一人に決めればいいのにって思うんだけど、飽きっぽいのか長続きしない。
……
でも一人に決められるのも嫌だな。
そうなったら俺はどうなるんだろう。
俺と一緒にいる時間が彼女に取られてしまうのかな。
そんなのは絶対嫌だ。
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