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第12話 てっちゃんは……

薫 てっちゃんは小さい頃から明るくて楽しい人気者だ。男子女子、誰とでも仲良くなれてしまう。 背が高くカッコイイから女子からの告白とかも日常茶飯事だった。 そんな人気者のてっちゃんといつも一緒にいたのは、何故か正反対の性格の俺。 同じマンションに住み親同士が仲良いので、小さい頃からしょっちゅう家を行き来する仲だった。 一人でいるのが好きな俺は、誰と話をしなくても友達がいなくても平気なんだけど、中々理解してもらえないらしく、親からはとても心配されていた。 友達と仲良くって言われても困るんだ。まぁ、学校でグループ作ったりペア組んだりの時に組む相手がいなくて困ることは多々あったけど。 クラスメイトとはどうしても馴染めなかったけど、てっちゃんは別だ。 てっちゃんは俺にとって特別な人だから。 一緒にいて会話があっても無くても落ち着くし、気を使わなくていい唯一の存在だ。だから俺は皆でワイワイしている時のてっちゃんよりも、俺と二人でのんびりしている時のてっちゃんの方が好きだ。 だけどそんな明るいてっちゃんが意外とデリケートなのは皆知らないだろう。 てっちゃんは昔から寂しがり屋で、俺と一緒にいないと落ち着かないんだ。 幼い頃のてっちゃんの親は共働きで忙しく、出張や帰りが遅い時は、てっちゃんをうちで預かりお泊りというのが多々あった。 だから普段俺がいないと眠れないということが良くあって、夜中にてっちゃん家から連絡をもらい、パジャマ姿の俺が添い寝しに行くこともしばしばあったのだ。 そんな時のてっちゃんは情緒不安定で良く泣いていた記憶がある。そんな時はぎゅうしてあげると落ち着いてくれたんだ。 サービス精神大せいなのはいいけど、相手の事を気にし過ぎて疲れているてっちゃんを俺はいつも隣で見ていた。 そんなに気を遣うならやめればいいのに……そう思うけど、そこはてっちゃんの優しい性格だから仕方がないんだと思う。 そんなてっちゃんと離れて別の高校に行くなんてできない。高校生となり成長した今、流石に夜泣きすることはなくなったけど、寂しがり屋のてっちゃんの傍には俺がいないと駄目なんだ。 てっちゃんに彼女ができてもてっちゃんは俺のてっちゃんだ。 だからそんな理由で俺を避けるのはとても心外だし……スゲー寂しい。 「塩崎は彼女いないの?」 「……いるわけないじゃん」 「わけないじゃんって。モテそうなのに違うのかぁ」 「……」 指定された教室に着いて適当な席に座ると隣に吉岡が座った。 ……隣座るんだ……同じクラスだから顔は知ってるけど、名前までは知らないし当然喋ったこともない。 なんだろ?すげー見てくる。 ??

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