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第13話 笑顔で囁かれ
薫
「なんだ吉岡がいるなんて珍しいな」
「?」
先生がプリントを配りながら隣に座っている吉岡に声をかけた。
「あー嫌ーこの間の小テスト難しくって」
「はぁ?難しいって……あんな基礎問題お前なら余裕だろう?プリントやるか?」
「やだなぁー先生!やりますよ!やらせて下さい!」
「そんな余裕があるならな、隣の塩崎に教えてやってくれ」
「……はぁい。喜んで〜」
ン?なんだ?
吉岡って頭いいのかな?
先生はそんな感じの言い方だったような。
何気なくチラリと隣を見たら、バッチリ吉岡と目があってしまった。
……何でこっち見てんだ?
「大丈夫、塩崎の先生になってあげるね」
ニッコリと笑顔で囁かれ、意味不明な言葉を発していた。
なんか、変な奴……
返事は返さず無視して目の前のプリントに集中することにした。
……?
んん?
……わ、わかんない。
えーと……??
ううぅ……ここも解き方わかんない。
……
……
結局問題の半分しか答えがあってなくて撃沈し、机に突っ伏してしまった。
……これって……壊滅的。
今回かなりヤバいのでは……
頭から湯気が出てる気がする。
帰ってからも勉強しないとマジでヤバいからゲームも出来ないし、てっちゃんとこにも行けない。
てっちゃんは勉強出来る方だから問題ないだろうなぁ。
「てっちゃんに頼らないで頑張ってみよっか?」
「え」
頭真っ白でフラフラと教室を後にしようとしていたら、吉岡が声をかけてきた。
「てっちゃんに迷惑かけないようにした方がいいと思うな。最近のてっちゃんは彼女できて忙しいだろ?」
「……そうだけど。俺は」
「てっちゃんは塩崎より、可愛い彼女優先だよ?」
「……」
「わかるかな?」
「……」
「そんな顔しないで。俺が教えてやるからさ!あーほらテスト前は皆忙しいから間宮も忙しいってこと。俺が赤点採らないように教えてあげるから元気だせよ。いい点採っててっちゃんを喜ばせてあげようぜ?」
「……てっちゃんを?」
「うん、そう!絶対喜ぶと思うな」
「うん……」
「よし!じゃ決まり。俺と一緒に勉強会だな。頑張ろうぜ」
吉岡にグイッと肩を抱かれて教室を後にした。
肩を抱かれたの嫌だったけど、てっちゃんのことで頭いっぱいで払い除ける余裕がなかった。
てっちゃんは彼女の方が優先なのかな。
てっちゃんは、俺のてっちゃんなんだけどな。
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