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第19話 じわじわと
薫
??
「……今のって何だったんだろう」
もう用のないエレベーターの前で、俺はポカンと佇んでいた。
今されたの……キスだった?
その部分を手で押さえつつ、さっき自分に何が起きたのか考えてる。
……
なんかてっちゃんが優しくなった?
今まで苦手な勉強のことを聞くと嫌そうにしていたのに、俺に聞くなって言ってたのに、これからは聞いてもいいってこと?
じわじわと嬉しさが込み上げてくる。
それにてっちゃんがあんなに俺が告られたことを、熱心に聞いてくれたなんて凄く意外だった。
てっちゃんは告白されることなんて慣れっこだから、俺が告られることなんて絶対興味ないんだと思っていたから。
あんなに一生懸命に聞いてくれるなんて、嬉しくてムズムズしてきてしまう。
中学であった出来事を何か誤解していたみたいだけど、冷たかったてっちゃんが優しくなってくれて、それだけで嬉しくてドキドキ心臓が痛い。
それにそれに!
彼女よりも大事って言ってくれた。
よりもってことは、よりもってこと……彼女よりも俺がってことだ!
てっちゃんは何よりも女の子が好きなのに、それよりもって!
……
「ほ、本当かな?」
チン
急にエレベーターが開いたと思ったら、どこぞのスーツ姿のおじさんが降りてきて、ボーっと立っていた俺と鉢合わせになってしまった。
あわあわ焦ってお辞儀をし、意味もなく再びエレベーターに乗り込んでしまう羽目に。
……い、意味ねぇ。
エレベーターは1階まで俺を乗せて行き、乗ってきた住人に変な目で見られてしまった。
「はぁ~」
何やってんだ俺、ダセー。
6階でエレベーターを降りて、急いで自宅に帰った。
……彼女よりもってことは、彼女より俺優先ってことだ。
当然だと思いつつも、てっちゃんがそう言ってくれたことが何より嬉しかった。
俺はもっとてっちゃんと一緒にいたい。
一緒にいて一緒にゲームしたりご飯食べたり、ダラダラごろごろしたいんだ。
風呂入って一緒に寝て。
……
「あ」
頭にキスしてくれたけど、これってどういう意味なんだろう。
息止まるくらい嬉しかったけど、深い意味はないのかな?
考えれば考えるほどドキドキしてくるけど、このドキドキはどういう……
いつもよりも苦しい気がするし、ため息も出てきて切ない。
……頭のなかはいつにも増しててっちゃんのことでいっぱいだ。
てっちゃんに会いたい。
「うん……よし、勉強聞くついでに聞いてみればいいんだ」
そうすれば疑問も解決、てっちゃんとも一緒に居られる!
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