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第36話 キス
「え」
「つきあってるなら、キスの一つくらいできるでしょ?違う?」
「あーと、だけど」
「心配しないで、私そういうの抵抗ないから、気にしなくていいわよ?できるのできないの?」
彼女の上から目線のその言い方に若干イラついたけど、今は抗議していい立場ではない。
けど薫とここでキスしろと言われて、はいそうですかって素直にできるわけ……
「てっちゃ~ん、キスだって……」
???
後ろからかけられた声の方を見ると、すっかりその気の薫が瞳を閉じて、こちらに顔を向けているではないか。
……お前ーーー!こらー!
口尖らせてんな!!!する気満々かよ!
こうなったらもうやけっぱちだ!
ドン引きされてもバカにされても、SNS炎上覚悟で薫の唇に思い切りキスをした。
薫を抱きしめ結構濃厚に!
ひゃー!!
こんなことやべーと思いつつも、薫と学校でキスしちゃうとか最高~~~!ってテンション上がってるアホな自分がいた。
……ったく、細い……可愛い腰してんなぁ……
このシャツの中に手を入れて、素肌を触りたい……とかそう思ってしまうと胸がドキドキしてくる。
やっけっぱちなキスだけど、サービス精神で少し角度をかえて披露してしまうのは俺の性格の悪いところ。
チュ……
リップ音までサービスして、唇をゆっくり離すと少し色っぽい薫の顔が視界に入りうっとり見つめてしまった。
赤い唇が濡れていて名残惜しい。
「な、な、なにそれ……」
……明らかに動揺したまやちゃんの声は震えていた。
まぁ、そりゃそうだよな。野郎同士のキス見せられて気分悪いよな……
「尊……」
……
は?
なんていいました?
まやちゃんを見ると、衝撃は受けているようだけど、気持ち悪がってはいないようなので、少しホッとした。
「……これで、納得してくれたかな?」
「え?あ、うん……ま、まぁ……」
「……そか」
ギュ……
薫は変わらず俺に抱きついていて、離れようとはしない。
そんな薫のことを無言でガン見してるまやちゃんが謎で怖く感じる。
「……尊い……」
……あ?
尊いって言った。尊いってなに。
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