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第39話 落ち着けよ!

薫に早く介抱されたくて、自宅についてからの俺の身支度の早いこと! 急いで着替えてる途中で、ハッと我に返った。 ちょっと待て!落ち着けよ!俺っ! そんなマッハで行ったら、超余裕ない男だと思われるだろうが。 この俺がガッツいてる感じでかっこ悪い〜 ……ため息をつきながら冷蔵庫からお茶を取り出し、コップに注いでゴクゴクと飲み干した。 「はぁ〜うっま!」 冷たいお茶が「まぁまぁお前冷静になれよ」と、言っているような気がする。 それくらい俺には余裕ない状態で興奮気味だ。 つかワクワクドキドキが止まらないし、早く薫の元へ行き、ギューって抱きしめたい。 薫の家、薫の部屋なんて高校入ってからは極力行くの避けていたから、スゲー久しぶりな気がする。 俺の気持ちを知らない薫は変わらずうちに来ていたけど…… …… …… リビングのソファにどっかと座って、壁掛け時計を睨みつけた。 時間…… 全然進まねぇ…… 秒針がまるで意地悪しているかの様にゆっくりスローに時を刻んでいる。 …… …… 「……あー!アホらし……時間が勿体ないわ」 そうわざとらしく独り言を言いながら、素早く支度をし、家を後にした。 薫の家は一つ下の階なので、マンションの階段を降りれば直ぐだ。 「どーぞー」 ガチャリと扉を開けた薫は、いつも通りのTシャツとハーフパンツ姿。少し眠そうな目元が色っぽく見えてドキンとしてしまう。 「お邪魔しまーす」 久しぶりの塩崎家は依然とほとんど変わらない。同じ家具の配置に、ベージュ色のカーテン…… 懐かしい気持ちにさせられ、優しい匂いがまた緊張した俺の心をホッとさせてくれた。 「あれ、おばさんは?」 「いないよ。今日仕事だし」 「……そか」 家に親が居ないってことは、今は俺と薫の二人っきりってことで、これはもうあれだろう。 お呼ばれされて、二人きり……なんか以前にもあったシチュエーションなのに、今回はテンションが急上昇! 「てっちゃーん!」 ぎゅーーーーーっ!!!! 「……」 無表情で両手広げ抱き着いて来る薫を思いきり抱きしめた。 薫の身体全身を包み込むように……薫のうなじの匂いを嗅ぎながら、首筋に唇を押し当てて噛みつくようにキスをする。 薫の家の廊下で抱きしめ合い、暫くそこから動くことができなかった。

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