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第3話
「にしざわくん、今日、激しい……っ」
「なんせ一つ大人になりましたから」
そして金曜の夜。いや、12時を過ぎたからもう土曜か。
媚びるわけではないけれど、先に帰った俺が夕飯を作り、いつもと変わりのない食事を終え、風呂も入り終えた後に俺が部屋に誘ってあらかじめ敷いておいたマットの上に東を組み敷いた。
なにか隠しているんだったら理由をつけて逃げるかと思ったけど、東はいつも通りで、色っぽく体をしならせて俺を受け止めた。決して女っぽいわけじゃないし、むしろイイ男だと思うけど、引き締まった腰とか洩れる声とかは何度しても奮い立つほど色っぽくて、狭いベッドの上じゃなくて良かったと何度も思った。
一つ年下の東は、出会った時からその呼び方で、ベッドの中でもそれを崩さない。
少し掠れた艶っぽい声で、あくまでも「西沢くん」と呼び続ける東。それをなんとか追い詰めて名前呼びさせてやろうと思っても、やっぱり変わらず、だからこそそれはいつでも俺を燃えさせる要素だ。
本人がそれをどう思っているかは知らないけれど、きっとわかってない。だから天然で俺を煽り続ける。
しかも何度しても一向にやめようとしない俺に、東からギブの声が上がったけど、聞き入れる代わりに至る所にキスマークを残してやった。
思いついたんだ。このまま疲れさせちゃえば、明日の予定なんか飛ばすんじゃないかって。
そしてこのまま一日中ごろごろすればいいじゃないか。いいと思うんだ、そんな誕生日も。特別な食事も、ケーキも、なにもなくたって、東とこうしていられることがなによりのプレゼントなんだから。
「あっ、や、待って、もう無理っ、ほんとに、ん、しんじゃうっ」
「うそ。お前の体が欲しいって言ってる」
その身長からしたら細いとはいえ、無理な体勢を強いているせいで体に負担がかかっているのはわかっている。それに何度も絶頂に導かれ、俺のモノも受け入れ、いくら営業職で体力が普通よりあってもさすがに限界だろう。
それをわかっていて、それでも逃げない東の優しさをいいことに、いつも以上に激しくそして長く頑張ったりしたんだけど。
翌朝、少し腫れぼったい目をした東に起こされ、急き立てられるように家を追い出された。
どうやら俺より予定を優先させたらしい。
出かけ際にごめんね、とは謝っていたけれどあまり申し訳なさそうな様子はなく、その様子がまた俺を傷つけた。
一体全体、誕生日の恋人より優先させる用事ってのはなんだってんだ?
納得いかないながらも追い出されてしまえばどうしようもなく、俺は渋々夕方までの暇つぶしを余儀なくされた。
言うことを無視して帰るという手もあったけれど、それでもし誰かと鉢合わせしても気まずいし、なにより今日わざわざケンカなんかしたくない。
本当に男を連れて込んでたらどうしよう、とか、いやいやそんなこと東に限ってありえない、とか、むしろ東のことだから普通に友達呼んでゲームしてるだけかも、とか、色々なことを考えては打ち消してと繰り返していたから、周りから見れば怪しいほど百面相をしていたかもしれない。
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