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第8話「後始末」
「っあ……あ……あ……き、清……あんまり……そこいじったら……」
狭い浴室に、シャワーの音と掠れた喘ぎ声が響く。
俺は壁に手を突いた状態で足を開き、清の手で中を掻き出されていた。
いいよと断ったのに清は手伝うと言って聞かないくて、結局こんな事態になってしまった。
中を綺麗にしているところなんて見られたくなかったのに、バッチリ見られて。その本人に指でかき回されているのだ。
太くて節くれだった指が、敏感なところに触れて声が漏れる。
恥ずかし過ぎて困っているというのに、俺の体は素直に快楽を拾ってしまって、抵抗も出来ない。
後始末にシャワーを浴びているはずなのに、浴室には隠微な雰囲気が漂ってしまい、いたたまれない。
早く終わってくれと思うのに、清はねちっこいくそこを弄ってくるから行為は一向に終わらないくて困る。
「でも、こうしないと綺麗にならないだろ?ほら動くとやりにくいから、じっとして」
「っう……でも……っあぁ、じ、自分で出来る……」
「自分でだとやりにくそうだし……それにさっきフラフラしてたから危ないよ。俺のせいなんだから俺がするって……」
清はそう言ながら、なだめるように首筋にキスを落す。
「……っ」
さっきイッばかりで身体中が敏感になっているのだろう、それだけで体にジワリと快楽が広がってしまう。
足は震えて、立っているのがやっとだ。
なんでこんな事になったんだろうかと俺は疑問に思う。
朝は、もう喋る事も出来ないだろうと絶望していた。嫌われて避けられることも覚悟していたのに何が起こったのか、いまだに理解できない。
仕事終わり、まさか清の方から話しかけてくるとは思ってなかった。
あまつさえこんなことになるなんて。
快楽に頭を浸しながらもなんとか自問自答する。
まだ、自分は都合のいい夢でも見ているのだろうか、でも中をかき回す指の感触は本物だ。それに馬鹿みたいに漏れる自分の喘ぎ声も。
足に力が入らなくて壁に手を突いて立っているのがやっとになる。
流れる水の音の他にグチュっと粘ついた液体の音がして、その音だけでカアッと頭に血が登った。
見えないと余計に清の指の形がはっきりと感じてしまって、ゾクゾクしたものが腰に響く。
思わず指を締め付けてしまった。
「……なんか中、すげぇ動いた。……誘ってんの?」
「っ!……ちが!……っあ!……だ、だめだ。そ、そこは……」
少しかすれたような声で言われて焦る。その途端、指の節くれだったところが前立腺に当たって、また体が恥ずかしいくらい反応した。
清の指も、出したものを掻き出す動きじゃなくなっている。
「してる時もここ擦ったら気持ち良さそうだった。ここ反応いいよね?」
「っあ……そ、そう。だ、だから触んないで……っあ……ほ、ほんっと……っああ!」
嫌だと言っているのに、清は楽しそうにそこばかりを責めてくる。
おさまっていたものはとっくに勃ち上がっていた、掻き出すだけのはずがただのプレイになりつつある。
「あ、康臣のも勃ってる?本当に気持ちいいんだな……」
清は感心したようにそう言って、前にも手を伸ばす。
「う、うるさい……っあ……さ、触るな……っあ……ほ、本当……っあ……」
前も後ろもいじられて、反論する言葉もままならない。
さっきはあんなに愁傷に反省していたのに、清はそんなことすっかり忘れているのか、興奮した息遣いが聞こえてくる。
涙で視界がぼやける、感じてしまって腰が勝手に動く。
それでも決定的な刺激が無いので、イクにいけなくて辛くなってきた。
「あ……ごめん、俺も勃っちゃった。康臣の声がエロいんだもん……」
清はそう言って腰を押し付けてくる、硬いものが腰に当たって体が一気に熱くなる。
その硬さに、体がまた反応して中を締め付けた。
「んぁ……あ。ば、ばか……」
責める言葉は、自分でもわかるくらい甘いものが混じっていて。説得力がないのがわかる。
「なあ、入れていい?絶対に中に出さないし」
「……っ……ふ……ぁ」
耳元で囁かれて、抵抗する言葉も出て来ない。
本当言うとすぐにでも入れて欲しかった、さっきから鈍い快楽ばかりで物足りない。
清の硬いものでゴリゴリこすられたい。でも、それを声に出しては言うのは恥ずかしい。
酔っているならまだしも、今はシラフだ。
「なあ、だめ?」
「っ……ほ、本当に出さない?……」
頭がクラクラしてきた、そろそろ限界も近い。
「うん、絶対……だからお願い……」
そう言って清は立派に勃ち上がったものを、足の間に擦り付ける。
それで限界が来る、俺は「わ、わかった……こ、今回だけだからな……」と言って僅かに腰を突き出す。
「やった」
「っあ。……ちょ、ちょっとまって……ゆっくり……っあっっ!!………っ!!!」
清は無邪気にそう言った後、おもむろに腰を掴むと一気に中に入ってくる。
あまりの快楽で目の中に星が飛んだ。中の敏感なところにゴリゴリとカリの部分が当たり、中はシャワーの水も手伝って、一気に清のものを飲み込んだ。
焦らされていたところに一気に刺激がきて、入れられた途端に軽くイッてしまった。
「っあ……あ……っ」
「っうわ、……やっぱ中めちゃくちゃ気持いい……」
「あ……っあ……ま、まって……ほんとゆ、ゆっくり……」
そう言ったが声に力が入らず、ほとんどシャワーの音にかき消される。
その代わり腰を打ち付ける音が室内に響く。立ち上がった乳首が壁に擦れて、それだけで気持ちが良くなる。
ほとんど足に力が入らない、今は清の腕で抑えつけられているから、なんとかなっていると言っていい。
ガッチリとした体で壁と挟まれ中をかき回される。
身体中が熱くて流れ落ちる水にも体が反応する。
耳元で清の荒い息遣いが聞こえて、耳からも快楽を流し込まれているようだ。
「っ……もう、イクっ……っっ」
今日は本当に何がどうなってこうなってしまったのか、いまだに理解できない。しかも絶えず快楽をあたえられるからもう何も考えられなくて、俺はせり上がってくる波に身を任せた。
その後、約束通り清は中には出さなかったものの散々揺さぶられイカされて、俺は浴室から出た頃には入る前よりフラフラになっていた。
「ほっんとごめん!」
体を拭くのもままならなくて清に手伝ってもらった後、俺はベッドにドサリと倒れこんだ。
グッタリしていると、清が申し訳なさそうに謝ってきた。
さすがにやり過ぎたと思ったのだろう。
「疲れた……」
体を使った仕事をしているから、それなりに体力には自信があったのだが、色々衝撃的なことがあったことも相まって相当消費した。
それに比べ、清はあんなにしたのにやたら元気だ、年はそんなに変わらないのになんだか理不尽な気持ちになる。
「ご、ごめんね……あ、頭も拭くね」
「ん……」
清は罪滅ぼしのつもりなのか、そう言ってタオルで頭を拭く。
返事もだるくて俺はため息みたいな声を出す。
清の手は大きくて動きは豪快だ。でもその手つきは意外に優しくて気持いい、人に頭を拭いてもらうなんて久しぶりだ。
うつ伏せになりながら、うっとりとした気持ちになって寝そうになる。色々あったけど怠すぎてなんだか全てどうでも良くなってきた。
「怒ってる?」
粗方拭いたところで、清が俺の顔を覗き込み、恐々と聞いてきた。
「別に……怒ってないよ……」
叱られた犬みたいな顔してそう言われたら、怒ってるなんて言えるわけない。
しかもそんな顔がまた可愛いいなんて思ってしまって、始末にをえない。
腰はジンジンしてるし、喉も少し痛い。それでもそんな事どうでもよくなるくらいセックスは気持ち良かったのも確かだ。
時計を見ると深夜もとっくに回っていた。
「とりあえず寝ようぜ、明日も仕事だ」
「うん」
眠らないと明日が辛い、頭の芯は重だるくてもう考えることも億劫だ。
清も寝られるようにベッドの端に移動する。
そうすると嬉しそうに清はベッドに乗ってきた、そう思うといきなり背後から抱きしめられる。
「うわ!」
驚いて思わず声を上げてしまった。清は構わず背中にぴったりと身をよせてくる。
まさかそんな寝方をするとは思ってなくて戸惑う。
「な、なんで?」
「いや、狭いから」
「狭いって言ったって腕まで回す必要なんてないだろ?それに暑くないか?」
「だって康臣いい匂いするし、クーラー効いてるから平気」
そう言って清は、首に顔を埋める。
「……お、おい。やめろよ」
恥ずかしくてジタバタともがいたが、清は俺より一回りくらい体格がいいだけあって動けない。
しばらく、じゃれるようにもがいていたが。
疲れていたこともあって力も出ず、気がついたら清はその体制のままあっさり眠っていた。
規則的な寝息が聞こえてきて、流石に俺も諦める。
手を伸ばしてリモコンで灯りを消すと、薄手のタオルケットを引っ張って清にも掛けた。
清が言った通りクーラーが効いているから暑くはない、でも背中に感じる胸板や回された腕が触れるところがやたら熱く感じる。
体は疲れているのに頭がやたら冴えて眠くならない。
あんなに激しいセックスをしてしまったのに、落ち着いてきたことで清の体を意識してしまう。
「……清」
改めて、朝あんなに絶望的な気持ちだったのに、それが遠い昔のように感じる。
体に回された腕をそっと握る。
清の手はゴツゴツして男らしい手だ、でもそれを握る俺の手もあらかさまに男だ。
清は俺が男だって本当にわかっているのだろうかと疑問に思う。
それはないだろうと思うが。それにしても躊躇がなさすぎだ……
もぞもぞ動いて清と向き合う体勢になる、清はぐっすり眠っているようで起きる気配もない。
清の顔は精悍でたくましい、男らしさが目立つがよく見ると整っている。
角ばってたくまし顎には少しヒゲが生えていてそれを見ていると、だんだんドキドキしてくる。こんなに近くでマジマジと見られるなんてなかなか無い。清は子供みたいに眠っている。
少し厚めの唇に指で触れた。
迷って触れるだけのキスをする、でもすぐに恥ずかしくなって元の体制に戻った。
何をしているんだと顔が赤くなる。
これからどうなるんだろう、とため息をつく。清は『また次にするとき』と言っていた。
その時は、また出来るんだと俺は勝手に嬉しくて期待してしまったが、よく考えるとその保証はない。あまり期待しないほうがいい。
せめてもと思って、もう一度清の手を握った。そうしていると、俺もいつのまにか眠っていた。
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