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第13話「 戻れない気持ち」
「あぁ……あん……あ……あ……」
清の動きは次第に早くなってきて、口から漏れる嬌声が止まらない。
足りなかったものが満たされたような感覚になる、でも体はもっと欲しいというように中が動いた。
清は気持ちよさそうに腰をグラインドさせ、たまに首筋や胸にキスを落とす。
「っく……」
中が動くと清は少し顔をしかめ、堪えるように歯を食いしばる。その表情は精悍で男らしくて、それだけで胸が高鳴る。
普段は子供みたいな無邪気な笑顔で笑ったりするのに、している時は飢えた獣みたいな顔をする。その顔でのしかかられ唇を舐めて獰猛な顔でキスされると、もうそれだけでイキそうになってしまう。
「……あっ、あん」
大きな手が胸の飾りを潰すようにこねる。少し痛いくらいなのに体は確実に快楽に変えていく、それだけで感じてしまう体が恥ずかしい。
こんなはしたない体だとバレたらどうしようと怖くなりながらも、それでももっとして欲しいと思う。
快楽でいっぱいになって、何もかもどうでもよくなってくる。
清の動きは段々と激しくなってさっき出したばかりなのに勃ちあがった俺の中心は俺の中心はもうすでに勃ち上がり、清の腹に擦られて先走りをこぼしている。
「康臣……そろそろイキそう……」
「うん……イッて……俺も……っ」
そう言ったと思ったらさらに中を穿つように突き上げられる。さらに中心を扱かれ自分でもわかるくらいに清を締め付ける。
「っく……」
「清……ああ!……」
清の体がびくんと震えて精を吐き出したのを感じた。それと同時に俺も出す。
限界まできたと思ったのにその感覚だけでまた快楽が上乗せされた気がした。
ずっと、どこかに上っているような落ちているようなそんな感覚だった。
「清……清……っん」
名前を呼ぶと同時にキスされて、苦しいぐらいに抱きしめられる。
清は何度か動いて、中に全部吐き出した。部屋に二人分の荒い息づかいが響く。
観ていた映画はいつのまにか終わっていて、モニターはなにも映していなかった。
少し放心状態で重なりあったまま抱き合う、床が冷たくて気持ちがいい。ベッドがあるのに何をやっているんだと呆れる、それでも重なる清の重みを愛おしく思う。
そじんわりと快楽が引いていく、でもその感覚に寂しさを覚えた。
全然足りない、もっとしたいと体が訴える。
「映画、終わっちゃったな……」
「また、後で観ればいいよ。……それよりさ」
ぼんやりとそう言うと。清は上半身を起こしながらそう言った。
そのまま、俺の頭の横に手をつき覆いかぶさりキスをすると「もう一回いいかな?」と掠れた声で言う。
俺の中に埋め込まれたものは、一度出したのにまだ固いままだ。
その感触に、体がまた熱を持つ。
「しょ、しょうがないな……」
嬉しかったが恥ずかしくて、また仕方のないふりをして了承する。
キスを返し、首に腕を回すと、清は入れたままのそれを、また動かし始めた。
中でグチュと音がしてゾクゾクとしたものが体を走る。
こんなことばっかりしていたら、そのうち自分はバカになってしまうんじゃないだろうかとぼんやり思う。
でもやめようなんて気持ちは一つも起こらず、俺はもう一度来る快楽に期待しながらそれに身を委ねた。
その後、結局俺たちはもう一回もう一回と回数を重ねてしまい、眠ったのは深夜を過ぎてしまった。
「ん……おはよう」
「おはよ。ってもう昼か……お腹すいたな……」
目を覚ましたのは昼近く。お腹が空いて目が覚めた。
しかし、何か食べようと思ったが、最近忙しくてまともに食料を買っていなかったことに気が付いた。
仕方なく買いに行こうかという話になり。二人で買いに行くことにした。
コンビニでお弁当やお菓子を買い込み部屋に戻る。
清はよっぽどお腹が空いていたのか、買った唐揚げを帰り道でもうすでにつまんでいた。
だべりながら買ってきた物を適当に食べる。
ついでに、昨日途中だった映画をもう一度観た。
外は相変わらず暑くて蝉がミンミン鳴いている、でも部屋の中はクーラーが効いていて快適だ。何もせずにダラダラ過ごす休日。
最高に楽しくて、俺たちはお腹がいっぱいになると、どちらからとなくキスをしたり触りあった。じゃれるように床を転がるように抱きしめあうと、二人で意味もなく笑いあう。
結局それは挿入を伴わない軽い行為に終わったが、最後にはそれに夢中になりすぎて、また映画を最後まで見れなかった。
お互いを扱きあい、最後には欲を吐き出すとベッドで絡み合うように抱き合う。
食欲も性欲も満たされて。俺はまたいつの間にかまた眠っていた。
「……ん」
目を覚ますと時間はもうすぐ夕方になろうという時間だった、外はまだ明るい。
それでも、なんだか部屋の中が寂しい感じがした。
「清……?」
ぼーっとした頭で起き上がる、気配がなくて名前を呼んだが返事が無い。
見回しても誰もいない。バスルームや玄関を見てみたがやっぱり清はいなかった。
どうやら帰ってしまったようだ。
「一言、声かけてくれてもいいのに……」
思わず不満気な声が出た。
眠っていたから、気をつかってくれたのだとは思う。しかし、静まり返った部屋に一気に寂しくなってくる。
しばらく仕事で会えなかったから、思うだけセックスできて楽しかった。だからこそ、一人になると余計にこの静けさが辛くなる。
清が帰ってしまった後はいつもこうだ、寂しくて泣きそうになる。
昨日からずっと一緒にいたというのに、今すぐ会いたいと思ってしまう。
セックスなんてしなくていい、ただ隣にいてくれるだけでもいい。
シーツに顔を押し付けるとかすかに清の匂いがした。次会えるのはいつだろう。
そう思った時、ガチャリとドアが空いて清が入ってきた。
「康臣?起きた?」
「……ふへ?」
会いたいと思っていた本人がいきなり現れてびっくりしすぎて、そんな間抜けな返事をしてしまう。
それが可笑しかったのか、清はクスリと笑い「寝ぼけてる?」と言った。
「どうしたんだ?帰ったのかと思ってた」
「ああ、実は一回自分の部屋には帰ってたんだ。これを取りに行こうと思って」
そう言って清は手に持っていた物を見せる、それはバイクのヘルメットだった。
「なに?」
「久しぶりにバイクで飛ばしたくなちゃって……一緒に行こうぜ」
清はそう言って俺にヘルメットを手渡す。
「バイク?……いいけど。なんで今?」
「昨日の映画見てたら乗りたくなった、最近忙しくてゆっくり乗れなかったから」
「……なるほど、でも俺はバイクとか持ってないけど」
「大丈夫、大丈夫。俺のバイクは二人乗れるから。おすすめの場所があるんだ、ほら行こう」
そう言われて、俺は促されるまま服を着替え、部屋を出る。
アパートの前には清のものと思わしきバイクが止まっていた。
「すごい、結構本格的なのに乗ってるんだな」
清のバイクはスポーティでかなり大きなバイクだった。
色は黒でシンプルなデザイン、車体には誰でも知っているような社名が書かれている。清が先ほど言った通り、よく見るとシートはタンデムになっている。
「昔からバイクは好きでさ。ずっと欲しくて、頑張って買ったんだ」
清はそう言って自慢げな顔をする。
「へえ、俺は詳しくないんだけど、高そうだな。すごい」
そう言うと清は苦笑して「そうなんだ、でもそのために働くと、結局バイクに乗れる時間が無くなるからジレンマだよ。改造とかもし始めちゃうと泥沼」と言った。
「でも、格好いいね」
「そうだろ?HONMAのCB400fっていって、乗りこなすのが結構難しいんだけど、スピードが出るから気持ちいいんだ」
清はそう言ってくしゃりと破顔する、本当にバイクが好きなんだと思ってこっちまで笑顔が移る。
「そういえば、どこに行くんだ?」
そう聞くと清は「着いてからのお楽しみ」といたずらっぽく笑うとヘルメットを被り、バイクにまたがってしまった。
仕方なく俺も渡されたヘルメットを被り、清の後ろにまたがる。
少しドキドキしてきた、なんだかデートみたいだ。
「しっかり掴まって」
「こ、こう?」
おずおずと腰に手を回す。外でこんなに密着していいのだろうかと思って緊張してくる。
しかも清はバイクに乗るためか少し体にぴったりの服に着替えていて、たくましい体の線が見えてさらにドキドキする。
「いや、もっと」
「わ!」
清はそう言って手を引っ張って体を密着させる。
「バイクで二人乗りは結構難しくて、しっかりくっついた方が楽なんだ。動きも俺に合わせて体重移動させてくれ」
「わ、わかった」
そう言われて改めて手を清のお腹まで回してぴったりとくっつける。清の肉体を体で感じて心臓がさらに高鳴った。そうすると今度は、心臓の音が伝わってしまうんじゃないかと思ってさらにあせる。
とりあえずヘルメットがあってよかった。顔が赤くなっているのは分からないだろう。
清はエンジンをかけバイクを走らせる、エンジン音が心地よく体に響く。
バイクが好きだと言っていただけあって清は運転も上手いようだ。バイクはすごいスピードで走り抜けていく。
いつもは大きなトラックを運転しているからか、余計にそう感じる。
風景があっという間に背後に飛んでいく。
風の音とエンジン音に包まれて、世界には清と自分しかいないような感覚になる。
回した腕に力を入れてさらに密着した。もうこの心臓の音がばれてもいい、ずっとこうしていたい、このまま目的地に着かなかければいいのにと思った。
バイクは一時間ほど走り郊外を抜けると、山の峠に入っていく。その頃には日が沈み、辺りはだいぶ暗くなった。
空気が少し冷たくなってきたなと思ったところで、清が「着いた」と言ってバイクを止めた。
「ここがおすすめの場所?」
そう言ってヘルメットを外しながら俺はバイクを降りる、整備された道だが辺りは森が広がっていて少し暗い。
「そう、こっち来て」
清もエンジンを止めバイクを降りると、ヘルメットを外しながら手招きしながら、道路の反対がわの少し開けたところに歩いていく。
それに着いていくと。そこはちょうど高台になっていて、見晴らしのいい広場のようになっていた。
「うわぁ……」
その高台からは、俺たちが住む街の景色が広がっていた。
丁度夕日が地平線に沈みかけていて、あたりは茜色に染まり空の色が綺麗なグラデーションになっている。真上の方は暗くなり星が瞬いていた。
しばらく見ていると、太陽は完全に沈み。
今度は街の灯りがともり始め色々な光に包まれていてキラキラ光り出した。百万ドルの夜景とまでは言えないけど、それでも十分綺麗な景色だった。
「ここ、バイカー仲間の間では割と有名なスポットなんだよ。いい景色だろ?」
そう言って清は嬉しそうに笑って言った。
今日も昼は暑く、今も空気は膨張したようにふわふわしている。それの所為か光もぼやけたように瞬くからとても幻想的だ。
「……うん、すごい綺麗だ」
俺はその無邪気な笑顔につられるように微笑み返しそう言う、それと同時にぎゅっと胸が苦しくなる。
夜景の美しさより、清の嬉しそうな笑顔がなによりも愛おしかった。
なにより、わざわざ連れて来てくれて見せてくれたこと嬉しくて胸がいっぱいになる。
これ以上好きになる事なんてないと思っていたのに、さらに好きという気持ちが溢れた。
「清、好き……」
聞こえないくらい小さな声でそう呟く。
後から後から溢れる気持ちに体がコントロールを失って、視界がにじむ、泣いていると気付かれたくなくて俺は慌てて夜景に目を戻した。
それでも、心臓はうるさいぐらいに高鳴って、苦しくなった。
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