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第15話「それぞれの決断」
——その日から、なぜか康臣と会えなくなった。
理由はわからない。突然メールをしても忙しいとか予定があると言われて都合が合わなくて会えなくなったのだ。
じゃあ仕事中でもに会おうと思ってもまったく会えず、すれ違うこともない。
いきなりで困惑する。
ほとんど毎日会っていたのに、いきなりそんなに会えなくなるとは思っていなかった。
理由もわからず、二週間たち、三週間たっても会えず、流石に避けられているのではないかと疑い始めた。
そして、今度はだんだんと腹が立ってきた。何か理由があるなら言ってくれればいいのにそれもない、身勝手だと思った。
それでも康臣の仕事が忙しいというのはわかっているから無理も言えない。だから、なんとか仕事中に偶然でも会えないか探しながら仕事をしていた。
——数日後。
その日は、あまり行かない地域に配達があり、俺はうっかり道に迷ってしまった。
うろうろしながら横道に入ったとき、見慣れたトラックが目に飛び込んできた。
シロネコのトラックだ、違う配送員の可能性もあったけど、ナンバーを見たら見覚えがあった康臣のトラックだ、慌てて近くに止める。
急いで自分のトラックから降りて、康臣のトラックの方に向かう。
すると、丁度配達が終わったのかすぐ隣の建物から康臣が出てきた。
「康臣!」
俺はそう言って声をかける。康臣は驚いた顔をしてこちらを見た。
俺は、このチャンスを逃すともう会えない気がして慌てて駆け寄り。強引に康臣の手を取るとトラックとトラックの隙間に連れこんだ。
「っ清……」
康臣は気まずそうな顔をして目をそらす。
「どういうことだよ。最近、連絡しても会えないし。何かあったのか?」
「べ、別に……何も……」
康臣は何もと言ったが、眉をひそめ泣きそうな顔で目を伏せてしまう。その態度はなにもないなんて思えない。俺はなおも康臣に詰め寄った。
「何もないことない。じゃあ、なんでいきなり会えなくなるんだよ」
「……」
康臣は後ずさり、困った顔をして唇を噛む。頑なに目をそらし、やっぱり何も言ってくれない。
そのことにだんだん腹が立ってきた。
壁に追い込み手をつき、逃げられないようにすると、顎を掴んでこっちらを向かせた。そのまま勢いで思わずキスをする。
「……っ!ぃや!」
康臣は首を横に振って嫌がる素振りを見せる。俺は、それにも腹が立ってさらに壁に抑えつけ深くキスをした。
唇を割り開き舌を這わす、久しぶりの柔らかい唇に体が熱くなった。
そして、そのまま服の上から康臣の体を探る。康臣の体も反応してびくりと震え、かすかに喘ぎ声を漏らした。
いつもの反応に、俺は嬉しくなってシャツの裾をたくし上げ、直接肌に触れる。
「……っや!……やめろ!」
康臣はそう言って俺を突き飛ばした。嫌がり方が本気で驚く。
「!な、何でだよ」
そう言うと、康臣は少し言葉に詰まったあと吐き出すように言った。
「……好きなんだ」
「え?」
何で好きだと嫌がるのか、意味がよくわからない。
「電話してるのを聞いた、お見合いするって話……」
「それは……」
「わかってる、わかってるよ。清にとって俺はただの友達だし、だから……俺はセフレでもいいと思ってたから……でも」
「セフレって……」
その言葉を聞いて唖然とした、康臣のことをそんな風に思ったことはい。しかし状況的に俺たちの関係はそれが一番近いことも事実だ。
康臣はなにかを堪えるようにさらに眉をひそめる。
「セフレだろ、そもそもそれが始まりだった……」
「お、俺はそんなつもり……」
「でも……俺たちはそんなことしかしてないだろ……」
「っ……」
そう言われて、俺は黙る。
「好きなんだ……清……前も言ったけど俺はゲイだ。本当は好きな人と恋人同士になりたい。セックスだけの関係なんていやだ……でも、清は俺のことそんな風には思ってないだろ?」
「そ、そんなこと……」
「じゃあ、俺と付き合ってくれる?俺のこと恋人って思ってくれる?」
「……そ、それは……」
俺は言葉に詰まる。そんなこと考えてもいなかった。
それを見た康臣は自嘲するように笑う。それと同時に涙もこぼれた。
「ほら……ね……いいんだ、誰にも言えない関係だ、親にも。バレたら変な目で見られる、清はもう俺と関わらない方がいい。だから……」
「康臣……」
「だからもう会えない。会いたくない、ごめん。俺の勝手な感情でこんな事言って……でも、もう……清と一緒にいるのが辛い、限界なんだ……」
康臣はそう言って顔を伏せ、俺の横をすり抜けると、自分のトラックに乗りそのまま仕事に戻った。目からはポロポロと涙がこぼれていた。
それでも俺は固まったまま、呆然と立ち尽くすし。それを見送ることしか出来なかった。
——あれから数日たっていた。
仕事が終わった後。俺はぼんやりと目の前のロッカーを見つめる。
「疲れた……」
最近、仕事の失敗が多い。
原因は康臣の事だ、あの事を考えていて仕事に集中出来なくて失敗を連発していた。
今日も時間指定の荷物を届け損ねてクレームが入った。
お陰で仕事が終わって、集荷場に戻ってから上司にさっき散々注意をうけたところだ。
それで、疲れてぼんやりとロッカーの前で立ち尽くしていたのだ。
今は肉体的な疲れより精神的な疲れの方が大きい。
いつもなら着替えて家に帰るのだが、今日はその気力すら出てこない。
康臣に言われたことを、ずっと考えていた。あれから、まだ自分の中で康臣の告白のことが上手く頭の中で消化できないでいた。
今後どうすればいいのか、あの時どう答えればよかったのか。考えても答えが出ない。
しかも康臣の泣いた顔が何度も蘇り、思考は中断され結局何も考えられなくなるのだ。
それで、仕事中にミスが多くなって疲れがたまり。それで余計に考えが纏まらず、と言った感じで悪循環が続いている。
「おつかれさん。お、どうした?随分元気ないな」
同じように仕事が終わった先輩が、声をかけてきた。ぼんやり突っ立ていた俺を見て、不審そうな顔をする。
「……あ、お疲れ様です。すいません、大丈夫です……」
「全然大丈夫に見えないぞ……そういえば最近、ミス連発してるな。元気も無いし何あったのか?なんなら、相談にのるぞ」
力なく答えると、先輩は流石に心配してそう言ってくれた。
何日も一人で考えてもまとまってないのだ、なら思いきって相談してみるのもいいかもしれないと思った。
「じゃあ、お願いしてもいいですか?……」
「おう、何でも言ってみろ。ここじゃ、なんだから座ろう」
先輩が気軽にそう言ってくれたので、休憩をするためのテーブルに移動する。
すると、丁度休憩室に仕事を終えた、オペレーターのお姉さんも入ってきた。
こちらに気がつき、挨拶してくれる。
「お疲れ様、清くん今日も大変だったわね」
「あ、本当に今日はすいませんでした」
オペレーターさんにも今日は迷惑をかけまくった。俺の失敗はまず窓口のオペレーターに回されるからだ。きっと対応に追われてしなくていい仕事をさせてしまった。
謝ると、笑って「まあ、今度から気をつけてくれたらいいよ」と言ってくれた。
「そういえばどうしたの?清くん近頃失敗が続いたね。最初の頃ならともかく最近は順調だったのに珍しい」
オペレーターさんも不思議そうにそう聞いた。
「ああ、やっぱりそう思うよな。俺もそう思って丁度聞くところだったんだよ」
先輩がそう言って椅子に座る。
「え?私も知りたい。聞いててもいい?」
オペレーターさんも興味津々で椅子に座った。
俺はいろんな意見が聞けるかもと了承して、俺も席に着く。
しかし、いざ話そうと思ったがどう説明すればいいか迷う。
「えーっと、ですね……最近、仲良くなった友達がいまして……」
俺はそう言って、もごもごと話し始めた、二人は興味深そうにこちらを見ている。どう説明したらいいか迷いつつ。俺は続けた。
「なんていうか、それがある日、飲みにいった酔った勢いで……その……体の関係になってしまいまして……でもそのままズルズルその関係を続けてたんです」
「へ〜それで?」
「そうなんですけど……最近会えなくなって、なんでって聞いたら。もうセフレは嫌だって言われて……そんなつもりはなかったて言ったら。じゃあ付き合ってくれるのかって言われて、俺何にも答えられなくて……で、もう会いたくないって言われたんです……」
ふと顔を上げると二人は眉をひそめてこちらを見ていた。
いや、言葉にしてみてわかったのだが俺は結構最低のことをした気がする。
「……それは、おまえが悪いだろ……」
先輩は呆れた顔でそう言った。
「……う。……そ、そのとおりなんですけど……」
とはいえ相手は男だったのだ、女の子なら流石に俺もそんなことしない。
でもその事情は言えなくて、俺は口ごもることしかできなかった。
客観的に見たら俺は女の子と体の関係になってズルズル付き合って、都合悪くなったら逃げたみたいに見える。
「なるほど……女の子といい関係になったけど、面倒くさいことを言われて捨てたってこと?」
「い、いや!そんなつもりはなかったんですけど……」
なんとか否定しようと慌ててそう言った。しかし、自分でも説得力は無いのはわかる。
「なに?清君は相のことが好きなの?嫌いなの?好きなら付き合えばいいじゃない」
「いや好きは好きですけど……付き合うって言うのがピンとこなくて……」
男同士で恋人同士というのはかなり特殊だ、違う世界すぎて想像できない。
まあ、あんなにセックスまでしていたのだからすでに十分特殊だろうが。
「清くんがそんなゲス野郎だとは思わなかったわ……弄ぶなんて最低……」
オペレーターさんに、ものすごい軽蔑の眼差しで見られ、さらには「まあ、元々単純バカっぽいところがあったものね……」とボソッと言われた。
さっきまで優しいお姉さん風だったのに、どんどん眉間にシワが寄ってきて怖い。
っていうか俺ってそんな風にみられてたのか?色々ショックを受けながらもなんとか言い返す。
「い、いや……でも、一緒にいる時はそんなそぶりもなかったし……」
むしろ、セックスは割と好きそうだったし……「嫌そうでもなかったから……言ってくれれば……俺も、もうちょっと考えたのに……」と言うと。
「言い訳すんじゃねーよ」
「!……す、すいませ……」
舌打ちと共に、虫けらを見るような目で睨まれた。
助けを求めるように先輩の方を見たが、目をそらされる。
「友達の彼氏にもいたわそういう最低なやつ。ヤるだけやって友達が本気になったら、面倒臭いって言われたって」
「い、いや。俺は面倒とかそんなことおも……」
「同じようなもんでしょ」
「……はい」
「話を聞いてみたら本当に最低な奴だったわ。自分勝手で、やりたいってだけで家に押しかけてくるわ、言わなきゃゴム着けずにやろうとするし。 家に入り浸ってヤるだけで他に何もしない」
それを聞いて冷や汗が出てくる、身に覚えのあることがありすぎる。
でもオペレーターさんは、さらにまくし立てる。
「挙げ句の果てに変なプレイを強要してくるんだって。友達は嫌だったみたいだけど好きだったから何も言えなくて。しかもお前も感じてたんだろ?とかセクハラまがいのこと言うらしい。AVじゃあるまいしそんなわけないじゃない。プレゼントとかも一切貰ったこともないし、たまにパチンコ屋でで貰った景品持ってきて、恩着せがましく取ってきてやったとか言うんだって」
「うわぁ……」
先輩もその話を聞いてドン引いている。俺もそれは流石に酷いと思う。
しかし、俺も康臣に男だからいいかと変なプレイをしたがったし。嫌がってたのに公園のトイレで無理やりした。それに家に入り浸ってた時、食事を作って貰ったことも度々あったのに食費も出してなかった。外で食事をする時も割り勘だったし、物をあげたことはもちろんない。
しかもお詫びと言ってやったのはバイクに乗せて景色を見せただけ。当然無料。挙句にその後結局ヤリまくったし。
思い出せば思い出すほど、俺の最低っぷりが浮き彫りになる。
冷や汗をかきながら目を泳がせ、動揺しているとオペレーターさんと目が合う。
「……まさか、清くんが友達の彼氏……?」
「ち、違います!それはないです」
相手は男だ、それは絶対ない。しかし似たようなことをしていたのもあって罪悪感がすごい。
否定はしたが、オペレーターさんは俺のことを死ねばいいのに、みたいな目で見ている、辛い……「死ねばいいのに……」ついに直接言われた。
「うぐ……す、すいません……俺、どうしたらいいですかね……」
「どうするも何も、本気で付き合う気はないんでしょ?向こうはセフレは嫌だって言ってるんだから、もう会わない方がいいわ」
「う……そ、それはそうなんですけど。……せめて謝った方が……」
「それが一番うざいのよ」
「ぐ……」
ものすごいドスの効いた声で言われた、もうすでにゴミを見るような目だ。
「結局それはそっちの自己満足。貴方はそれで満足するかもしれないけど、向こうはさらに嫌な思いをするだけよ、会いたくないって言ってるんだから。謝るだけなのに会いに行くとか迷惑。あんまりしつこくするとただのストーカーだからね」
「……はい」
ぐうの音も出ないとはこのことだ。
俺はうなだれる。
オペレーターさんの言い分は当然だ、わかる……でも胸の中がモヤモヤする。本当にもう会わない方がいいのか……本当にもう会えないのか、そう考えると、さらに胸の中のモヤモヤが悪化する。
「むしろ、その子には良かったじゃない。あんたみたいな最低な奴と別れられて。健気でいい子みたいだから、そのうち新しい彼氏でもできるでしょ。関わらないでいてあげるのが一番だわ」
「っ!……」
その言葉を聞いて今度は胸がムカムカしてきた、思わず眉間にシワがよる。
「そ、それは……なんか嫌だ……」
「はぁ?なに言ってるの、あなたにはその権利はないわよ」
「っ……はい」
オペレーターさんは相変わらず虫を見るような目で、バッサリと切り捨てるように言った。
俺はうなだれる。
——その後、オペレーターさんの説教は続き。さらにくたくたに疲れて家に帰る羽目になった。
相談すれば何か解決策が浮かぶかと思ったのに、自分のゲスっぷりが浮き彫りになっただけだった。
通勤に使っているバイクに乗りながら、ため息をつく。
コンビニで適当に買った弁当をあけ、空腹を満たす。
前はそんなことを思わなかったのに、最近弁当がなんだかまずい気がする。康臣と一緒に食べた時はそんなこと思わなかったのに。
ぼんやりテレビを見る。疲れたのだからいっそのこと寝てしまいたいが、今日は眠れる気がしない。
康臣に言われたこと、オペレーターさんに言われたことが頭の中で渦巻く。
帰り際先輩がオペレーターさんに味噌糞言われた俺に『まあ、おこってしまったことはしょうがない。でも、今後のことはちゃんと考えた方がいいと思うぞ。オペレーターさんが言ったみたいに謝るだけならもう会わない方がいいけど、本気で好きなら今からでも間に合うと思うよ』と。
康臣のことは好きだ。でもその好きは友達としてでしかなかった。
セックスをしたのも今から思えば康臣はゲイだし、気持ちがいいから丁度いいよねと、自分の都合のいいよう解釈して康臣の気持ちとか何も見ないようにしていた。
自分の馬鹿さ加減が嫌になる。
ゲイなんだからだから男が好きなんだろうし、恋人にしたいのも男で当然だ。それなのに俺は自分がそれに当てはまるとも考えてなかった。
それでも、いきなり恋人とか言われてもいまだにピンと来ない。
康臣は優しい、俺が知らないところできっと苦しんでいたんだろう。だけど文句も言わずに俺のわがままに付き合ってくれていたのだ。オペレーターさんが健気だと言うのもわかる。
康臣の顔を思い出す。
ニコニコしながら俺の話を聞いてくれた時の顔や、真剣な顔をして仕事の話をした時の顔。それから意外に天然で、それを指摘すると赤くなって照れたり——それからベッドで目を潤ませイク瞬間の顔。
「康臣……」
思い出して、思わず体が熱くなる。
今すぐしたいと体が求める、でも会いたくないと言って、悲しそうな泣き顔をも同時に思い出して、そんな気持ちも萎む。
あんな顔をさせたかったわけじゃなかった、だけど結果的には康臣を傷つけてしまった。
出来れば謝罪したいけど、二人の話を聞くかぎりやめておいた方が良さそうだ。
じゃあ、康臣と恋人になるのか?って話に戻る。
同性愛のことは真面目に考えたことはない。
特に嫌悪感があったわけではないが、自分とは関係のない事としか考えたことがなかった。
マイノリティという言葉があるように、きっと少数派というだけで俺たちにはわからないような差別があったり、辛い思いがあるのかもしれない。
怖いのは、俺がその事について何も知らないということだ。たとえ好きだと簡単に言って恋人同士になったとしても、また認識の違いで康臣を傷つけてしまうかもしれない。
今日、先輩に相談した時も相手が男だとは最後まで言えなかった。
それは、俺自身が男同士というものが特殊で変に見られると、わかっているからだ。だから言えなかった、意識してなくても差別になる。
きっと康臣は最初から傷ついていた、その証拠に泣きそうな顔で『セフレでいいと思ってた』と自虐的に言っていた。
最初から諦めて、俺の相手をしてくれていたのだ。俺といたらまた康臣を傷つけてしまうかも、それは嫌だこれ以上傷つけたくない。
……でもこのままで終わらせたくないという気持ちも強い。
「はぁ……」
ため息をつきテーブルに突っ伏する。
でもこの気持ちは俺の願望で、結局は自己満足なのかもしれない。そうだったら、いつか時間が経てば消えてしまうのか。
考えがまとまらず頭を抱える。
そういえばと思い出す、初めて偶然街で会って飲みに行ったとき康臣はいつもと少し違う服装をしていた。
それで、もしかしたらと思い至る。
ゲイの人や同性愛の人達が集まる場所やバーがあるというのは聞いたことがある。もしかしたらあの夜、康臣はそこに行こうとしていたんじゃないだろうか。
次いで、オペレーターさんの言葉を思い出した、特に『すぐに新しい彼氏ができるでしょ』という言葉。
また言いようのない気持ちになった。ムカムカしてその彼氏とやらをぶん殴りたくなった。思わず拳を握りしめ、頭の中でそいつをボコボコに殴ってみる。
しかし気分は晴れない。
「……俺にはその権利は無いんだ……」
どさりと床に寝転んだ。
本当に俺が何もしなければ、康臣にはすぐ新しい彼氏はできるだろう。なんせあんなに優しくて可愛いくてエロいのだ、同じゲイならきっとすぐに好きになるだろうし。俺みたいに男に興味が無くても、あんな風に誘われればきっと康臣のことは好きになるに違いない。
また、康臣に新しい彼氏ができた想像をしてしまい、またムカムカしてきた、ゴロゴロ転がりながら頭を抱える。
どうすればいいのかわからない。でも——
「……ちゃんと考えないと……もう、後悔したくない……」
天井を見つめ考える。
俺はどうするべきか、俺はどうしたいのか、ない頭で考える——
「……よし!」
しばらく考えた後、そう言って起き上がる。
その時丁度スマホが鳴った。
手に取るとモニターには母親からの電話だった。
——俺は決意を込めて一息つき、電話に出た。
「もしもし、母さん——」
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