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「…今日は…晃の代わりに来た…」 緊張で口の中がカラカラに乾く。 せめて、声が震えないように気を付けた。 速水は何も言わないまま、俺を見続ける。 晃じゃなく、俺が来た事に驚いているのか、いないのか…その表情からはわからない。 俺も速水の瞳を見詰め続ける。 今更、瞳を逸らすなんて恐くてできない。 そうして何時間にも思える時間…実際は何分という短い時間だったと思うが…、俺達は見詰めあっていた。 緊張に耐えきれず貧血を起こす直前、速水の手が俺の腕を掴み、用具室の中に放り込まれた。 俺が用具室の地面に倒れ込むと、埃が舞う。 「…痛…」 突然のことに驚き、立ち上がろうとした俺の背中に速水が覆い被さってくる。 「…な…何…?」 「晃の代わりに来たんだろ?だったら大人しくしていろ」 俺の耳元で速水が囁く。 それでも俺は自分の身に何が起きているのか、わからなかった。 ただ、逃げないと…とは思った。 だが、緊張に強張った俺の身体は思うように動いてくれない。 「…た…助け…」

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