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「…まだ、ヤッてんの?」 声が聞こえた。 …嘘だ…。 「早くイカしちゃってよ」 快感で意識が朦朧となっていても、間違うはずのないその声。 …嘘だ。 彼の足音が近付いてくる。 …彼がここに居るはずがない。 確認したくても、もう俺は指先すら自分の意志では動かせない。 速水は人が入ってきても、行為を止める事はなかった。 俺はイカせてもらえず、快感だけを与え続けられて朦朧としていた。 ぐったりと速水の身体にもたれかかり、頭を速水の肩に預けて喘いでいるだけ。 彼の近付いてくる靴音がして、俺達が居る側で止まった。 彼の視線を感じる。 だが、速水は手を止めない。 「…あっ…もう…許し…」 「違うだろ、由貴。イカせて、だ。ほら、言ってみな?」 速水が俺の耳元で意外なほど甘く囁く。 だが、彼の前でそんな言葉を口にできるはずがない。 唇を閉じた俺に、速水が楽しそうに含み笑いをしている。 その直後、彼が舌打ちする音が聞こえ根元を縛られてイケないでいる俺自身を軽く蹴った。 「…ああ…っ!!」 目の前が一瞬、真っ白になり俺の身体が跳ねた。 根元をキツく縛られていなければ、イッていただろう。 「…変態」 今まで聞いたこともないような冷たい、嘲るような声が聞こえる。 「…おい、もうよせ」 速水が彼から庇うように俺を抱き締める。 「だって、僕、コイツの事、嫌いだし。ムカツクんだもん」 「…おい!!」 いきなり頭を掴まれ、顔面を思い切り殴られた。 -気を失う寸前…彼と速水が言い争う声が聞こえた…ような気がした………。

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