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「…そ…それに、学校だってあるし…」
俺は、頭の中に浮かんだ顔を振り切るように口を開く。
「学校?んなもの、どうとでもなるさ」
俺の額の手当てを終わった速水は、俺の身体に巻き付けてあったシーツを剥ぎ取った。
「…健気だよな、誰も帰ってこない家で独り、両親が帰ってくるのを待っているなんて…」
速水がじりじりと俺に近付く。
「だったら、ここで俺を待ってなよ。俺は帰ってくるぜ?」
俺はじりじりと後退する。
「…や…嫌だ…」
俺はベッドから飛び降り、ドアに向かって走る。
「開けて!!誰か!!助けて!!」
ドアをバンバン叩き、取っ手を掴んで叫ぶ。
「誰か!!開けて!」
「無駄だよ。ここ、防音がしっかりしているから、外に声は聞こえない」
そう言われても、俺は叫ぶことを止めなかった。
「誰か助けて!!」
「だから、無駄だって」
速水は笑いながら俺の裸の腹に腕を回し、ベッドへ連れて行こうとする。
「嫌だ!!誰か!!助けて!!」
ドアの取っ手を両手で強く掴み抵抗するが、無駄だった。
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