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「………何、してるの?」
寮に帰って青山と別れ、自分の部屋でくつろいでいるオレの背後で声がした。
振り向かなくても、誰かわかる。
ノックも許可もなく勝手にオレの部屋に入ってくるのはアイツしかいない。
林彰文。
この高校へ入学した当初、誘われて何度か関係を持ったことがある。
気持ちいい事が好きな快楽主義者。
可愛い顔をしているので、この学校では珍しく姫扱いをされている。
しかし、彰文から誘ってきたとはいえ…好きでもない人物と関係をもってしまって、今では後悔している。
べつに彰文が初めての相手というわけでもないが、やっぱり好きでもない相手とする行為は空しい。
だから最近は彰文からの誘いを断ってばかりいるが…初めは何度か誘いに乗ってしまった手前、あまり邪険にできない。
彰文の相手はオレだけじゃないから諦めてくれたらいいのに、可愛い顔をした彰文が抱く事ができるオレは貴重らしく、なかなか諦めてくれない。
事あるごとに誘ってくる。
「ノックもせずに部屋に入ってくるなと何度も言ってるだろ」
振り返らずに言ったオレに、彰文はいつもと変わらぬ調子で話しかけてくる。
「そんな細かい事、気にすんなって。それよりあれ、何?」
「………あれ?」
「あれ?じゃないよ。さっきの、あれ、何って言ってんの…最近、付き合いが悪いのはそのせい?まるで付き合い始めたばかりのカップルみたいにイチャイチャしちゃって…」
「お前には関係ないだろ。だいたい、目障りなら、見なければいいじゃないか」
「無理。二人してあんなにピンクのオーラを撒き散らしながら帰ってくるなんて。僕の誘いは断るくせに」
ベッドの上で寝転がったまま雑誌を読んでいるオレの側に立って、文句を言う彰文。
「関係ないだろ」
オレは見ている雑誌から顔を上げずに答える。
「僕は溜まってるの!!」
「だったら、誰かに相手してもらえば?」
「抱かしてくれるのって雅志だけだもん。皆、僕の事を姫扱いしてさ。別にそれはそれでいいんだけど。時々、物足りないっていうか…。自分は雄だって、確認したい時があるんだよね。そういう時は、手っ取り早く同じ雄を抱く。ね?だから、しよ?」
ベッドに両手を着いてオレに顔を近付けてくる。
快感に忠実で、何事にもストレートな彰文。
そういうところ、嫌いじゃないけど。
オレは彰文から顔を逸らし、溜め息を吐いて雑誌を閉じ、ベッドに座ると彰文を見た。
「彰文。オレはもうお前の相手はできない。ごめん。本当はもっと早く言うべきだったけど…」
「はあ?何、言ってるの?意味、わかんないんだけど…っていうか、今、そんな事を言う場面じゃないだろ」
「…いや、今まではっきりさせなかったオレが悪い。だから、ここではっきりさせよう。オレは彰文をそういう意味で好きじゃない…オレ、好きな………」
「好き、嫌いは関係ないじゃん。ただ、気持ちよければいいんだよ」
オレの言葉を遮り、彰文が言う。
「…オレは無理だ…そんな事はできない」
「僕も無理」
彰文はオレの肩を掴み、ベッドに押し倒す。
「だって僕のココ、こんなになってんだぜ?だから、な、いいだろ?」
オレの両足の間に身体を入り込ませ、股間を押し付けてくる。
彰文のソコが起っているのに気付いた途端、オレは彰文を突き飛ばして部屋を出た。
後ろで彰文の喚いている声が聞こえたが、気にしない。
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