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3ー1
ドアを開けると、部屋の中へ由貴を放り込んだ。
由貴は部屋の中、倒れ込んだままおれを睨み付けてくる。
-面白い。
由貴に近付いたおれは右手を振り上げ、由貴の左頬に思い切り振り下ろした。
部屋の中に、頬を叩く乾いた音が響く。
「お前は誰の物だ?ん?」
由貴の前髪を掴み、引っ張って顔を上に向かせる。
「俺は、誰の物でもな…」
由貴が言い終わる前に、今度は右頬を叩く。
「少し自由にしてやれば、偉そうな口をきくようになったな。まあ、いい。お前が誰の物か、もう一度、その身体に教えてやる」
掴んだ髪から手を放すと、由貴は座ったまま尻でずりずりと後ずさりし、おれから離れようとする。
その姿に嗜虐心を刺激されたおれはワザと追い詰めるように、ゆっくり由貴に近付く。
由貴の瞳が逃げる場所を探している。
どこにも、逃げられないというのに。
やはり、由貴は面白い。
「あ、晃は?」
部屋の隅に由貴を追い詰めた時、思わずという風に由貴が聞いてきた。
晃?
おれは由貴を見下ろしながら、方眉を上げた。
聞いたことがあるような気もするが、はっきりとは覚えてない。
もしかしたら取り巻きの中に居たヤツかもしれないが、いちいち取り巻きの顔と名前なんか覚えていない。
「もしかして…覚えてないの?」
おれの顔を見て、悲しそうな顔をする由貴。
「人のことを気にしている場合か?」
おれの言葉に、由貴が顔色を変える。
由貴のことを好きというわけではないが、手放す気もない。
由貴が他のヤツの姿を目に映すことも、他のヤツの名前を呼ぶことも許さない。
今、由貴の瞳におれが映っている。
そう、それでいい。
だが、由貴の方へ伸ばしたおれの手を由貴は手で跳ね退け拒否した。
………気に入らない。
おれは由貴の襟元を右手で掴み引き寄せると、首に噛み付く。
由貴は叫び声を上げて、必死でおれから逃れようと暴れる。
それが気に入らずに、首筋に噛み付いた歯に力を込める。
口の中に、鉄の味が広がった。
その血を啜り、傷口を舐めると由貴は叫ぶことを止めて大人しくなった。
そう、そうやって大人しくしていたら、優しくしてやる。
おれは、由貴のシャツの釦を外していった。
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