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「…廊下で話をすると、響くから」 掴まれた手にドギマギする。 「どうした?何か、あったのか?」 俺を心配してくれる三城。 泣きたくなる。 誰とも関わらないように生活していたのに。 いつの間に、三城の存在がこんなにも俺の中で大きくなっていたんだろう。 ほとんど、まともに話したことなんてないのに。 いつも、三城の方から話しかけてきて。 俺が返事を返したことなんてないのに。 それでも、いつも馬鹿みたいに話しかけてきて。 「ごめん、こんな夜中に。寝てた、よね?」 「いや、起きてたから大丈夫。それより、やっぱり何かあったんじゃないのか?」 俺は首を左右に振る。 「何もない。ただ、謝りたくて。今日のこと」 「…いや、それはいいけど。俺も聞きたい事があるんだ」 聞きたい事…? 「何?」 「今日のあの車、速水馨が乗ってたよな?知り合い、なのか?」 どうして………。 どうして、三城が速水を知っているのか。 そう考えるよりも先に、俺は首を左右に強く振っていた。 「速水は、いい噂を聞かないから、気を付けたほうがいい」 俺の事を心配して、真剣に忠告してくれている三城に心が痛む。 「ごめん」 「どうし…どうした?やっぱり、速水に何か、されたのか?」 「ごめん、ごめんなさい」 涙を流して謝り始めた俺に三城はオロオロとし、大丈夫か?を繰り返すばかり。 「ごめん。やっぱり、無理だ」 「え?」 「男同士なのに、好きとか。やっぱり無理だよ。おかしい」 「どこが?」 「え?」 「どこがおかしい?」 「だ、だって」 「好きなものはしようがないだろ」 俺の顔を真っ直ぐ見てそう言い切る三城に、俺は何も言えなかった。 「オレの気持ちを受け入れてくれとは言わないけど、否定はしないでくれないか」 その時。 何故か、速水に見せられた映像が思い出された。

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