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-馨が由貴を気に入ったことはすぐに気が付いた。
でも、馨の節操のなさは有名だったし、それと同じ位すぐ飽きる事でも有名だったから、今回もすぐ飽きるだろう。
そう、思っていた。
僕は馨を好きだったし、馨も僕の事を好きなんだと思っていた。
馨が他の男女と関係を持っても遊びで、僕とは違うんだと。
僕と馨は恋人同士だと。
疑う事なく、そう思っていた。
まさか。
他の、その他大勢の中に僕も入っていたなんて。
思わなかった。
僕の名前さえ、馨の中に残っていなかったなんて。
知らなかった。
僕は恋愛で由貴に負けたのか。
そんな事は認めたくなかった。
僕はいつも一番だった。
皆は由貴より僕を注目した。
可愛がられるのはいつも、僕。
いつも。
いつも。
そうだった。
幼い頃から、いつも。
僕の母親と由貴の母親は幼なじみだったそうだ。
そして、母親は由貴の父親を好きだったらしい。
…今じゃ考えられないけど。
由貴の母親に好きな男性を奪われたと誤解した母親は由貴の母親に異常な程のライバル心を持ち、僕にもソレを植え付けた。
それは由貴の両親が別居してからも変わる事なく…。
由貴には負けるなと言われて育った僕は由貴にずっとライバル心を持っていた。
そんな僕とは違い、由貴は僕の事を親友だと思って何でも話してくれた。
だから、由貴の両親の中がとっくに冷めていて、由貴が高校に入ると同時に、お互い別のパートナーと住み始めた事も知っている。
結局、僕の母親は最初から由貴の父親に相手にされていなかったのだ。
その事を知っても、幼い頃から植え込まれた由貴に対するライバル心がなくなるわけもなく。
由貴に勝つ為に必死だった。
勉強も、スポーツも。
恋愛でさえも………。
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