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6ー1
-青山がオレの前から姿を消した。
学校はいつの間にか退学届けが出されていて、寮の部屋も引き払われていた。
先生に青山がどこに行ったのか聞いても、教えてもらえなかった。
青山が親しくしていた友人も、いない。
いつもひとりでいた青山。
捜そうにも、オレは青山の事を何も知らない。
いや、ひとつだけある。
青山が転校してくる前に、オレが青山を初めて見た場所。
あそこなら、もしかして青山の事が何かわかるかもしれない。
しかし………。
その場所へ行こうとしても、足が動かない。
冷や汗が流れ、心臓がバコバコして行けない。
今日は行こう。
今日こそは行こう。
そう思いつつも行くことができず、月日が過ぎて卒業が近付いてきた。
そんなある日-。
久し振りに彰文がオレの前に現れた。
それまで煩い程、オレにくっ付いてきていた彰文は、青山がいなくなった日からオレに纏わり付かなくなっていた。
理由は知らない。
オレは青山の事で頭が一杯だった為、気にしなかった。
「…青山由貴の事は忘れたほうがいいよ」
「え?」
「青山の事は諦めて、忘れた方がいいよ」
「青山の事、知っているのか?」
勢い込んで聞くと、彰文は横を向いた。
「知らない。でも、そう伝えてくれって頼まれたんだ」
「誰に!?青山はどこにいるんだ!?教えてくれ!!」
オレは彰文の腕を掴み、頼み込んだ。
「だから、知らないって!!」
彰文はオレの腕を乱暴に振り払う。
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