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第19話 先輩こそオレの何が気に入ってんの?

「うわぁ、そんなに否定しなくても。真希(まさき)、すっごく傷ついちゃうな」 と、先輩はプクっと頬をふくらませた。 わざとらしい。 自分のことを下の名前なんかで言わないくせに。 この人が知っていることをばらすなんて、何かしら企んでいるはず。 「もう、桜井くんには頼まないもん。龍ヶ崎くんにお願いするから。ほら、ご飯食べちゃわないと冷めちゃうよ?」 と、言ったあと、自分のヨーグルトをパクっと口にふくんだ。 自分の食べ物に集中し始めた先輩を見ても、オレは自分のものには手をつけられなかった。 お茶を飲んで立ち上がろうとしたオレに、 「食べないの?」 と、先輩。 「もうお腹いっぱいなんで」 と、答えて立ち上がったら、 「ところでさぁ、『ラブ・キャンディ』を飲み込んだあと、風紀委員に輪姦(まわ)されたでしょ」 と、先輩がトーンを落とした男っぽい声で言った。 (※詳しくは第1作目『飴(龍ヶ崎×桜井シリーズ①)』を参照) 「そんなこわい顔しないの。桜井くんらしくないよ?」 自分がどんな顔をしてるなんかわかんないけど、先輩をにらんだのは確かだ。 「すっごく気持ちよかったでしょ。初めてが複数プレイなんてなかなかないから。忘れられない思い出になったね」 と、先輩。 楽し気な言葉尻とは正反対の雰囲気で、まるで蔑んだように言われた。 「座ったら?」 と、先輩。 これで席についたら、完全にからめとられそうで出来ない。 「桜井くん目立ちまくってるけど、いいの?」 さすがに立ったまま、微動だにしないのは変に思われても仕方ないけど。 この人が怖くて座れない……。 先輩の言動を一つ一つ訂正したいけど、何かを口ばしってしまったら、取り返しのつかないことになりそうで、しゃべれない。 「まぁ、いいいけど」 と、先輩はオレを見上げて話してくる。 「風紀委員てさぁ、すごく事務的っていうか機械的なんだよねぇ。なんか事件とかあってもさぁ、解決すれば素知らぬ顔して引きずらないんだよね。感情論でお情け頂戴なんて絶対にしないし。龍ヶ崎くんが輪姦(まわ)されたキミを、どうして相手にしているかわかんないんだけど。よっぽどキミの何かが気に入ったんだと思うけど、それが何か僕も知りたいな」 龍ヶ崎がオレを気に入ったとは、とうてい思えない。 ただの遊び相手が欲しかっただけ。 『無条件に何をしてもいいオモチャ』 龍ヶ崎がオレに言った言葉のまんま、オレはオモチャでしかないんだから。

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