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第23話 ムリヤリじゃないときって、あったっけ?

「行くよ」 と、龍ヶ崎に腕をつかまれた。 「や、だ」 「あんたに選択肢なんかない」 「絶対に嫌」 「じゃあここでもいいけど。防音が完璧じゃないから、声は抑えて」 と、龍ヶ崎がベッドにのりあがってきた。 オレの髪をなでたあと、耳をさわり、長い指がオレの首筋をはう。 オレはガバッと上体をおこして、龍ヶ崎から距離をたもった。 「今日はムリ。明日も欠席になるってば」 と、オレが言ったら、 龍ヶ崎は小さくため息をついた。 「手加減する」 「信んじられないわっ」 と、オレは即答した。 「ムリヤリされるほうが好きなわけ?」 と、龍ヶ崎は的外れなことを言ってきた。 「手加減もムリヤリも関係ない。今日はしたくないの」 「仕方ないなぁ。お仕置きは延期してあげるよ」 「はあ?」 本気でオレのことヤり殺す気か? ズルズルと壁際まで尻であとずさった。 ダブルベッドだけと、しょせんベッドの上。 龍ヶ崎にすぐに追いつめられた。 伸びてきた長い腕がオレの肩をつかんだ。 キレイな指が鎖骨をなぞる。 「や、だぁ」 ぞくりと、身震いして声がでた。 「さわっただけで、そんな声だすのに、したくないの?」 「しないって言ったらしないの。龍ヶ崎はしつこいから、嫌なんだってばっ!」 オレの胸元をさわっていた龍ヶ崎の手が、ピタリとまった。 切れ長の黒瞳がすっと細められた。 室内の気温が何度か下がった気がする。 「しつこい、ねぇ」 オレは墓穴をほってしまったようだ。

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