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第47話 野間のルームメートは生徒会長の親衛隊員
オレはシャワーをすませて、髪を乾かしてからリビングにいった。
自室へ続くドアを開けながら、
「風呂、空いたよ」
と、龍ヶ崎に声をかけた。
けど、
龍ヶ崎はいなかった。
……帰ったんだ。
帰るときは、一言、声かけしていくのに。
ヤらないと、退出が早い。
なんかモヤっとする。
いつもと違うと、なんか調子がくるう。
さっきまで、布団の上でごちゃごちゃしてたら、ぐじゃぐじゃになった掛け布団をめくって、中に入った。
安穏な時間を手にいれたのに、どことなく落ち着かない。
束縛されない自由な4日間を手にしたのに、気がはれない。
今日は寝てばっかりだから、なかなか眠れなかった。
枕元に置いていたスマホがなり、起こされた。
「……はい」
『今、起きた?』
受話器ごしに聞こえる、朝っぱらから、さわやか低音ボイス。
「……はよ。野間っち」
『朝メシ食いに行く?』
「う~ん……あと5分」
『今日もサボリかぁ』
「……行くけど、眠い」
『メシは?』
「食べる」
『じゃ食堂で』
用件だけ言って、通話は切られた。
のっそり起き上がって、洗面所にむかった。
「……うわぁ、ぶさいく」
特にどよんとした目が、ひどい。
顔を洗っても、力を持たない目がヤバい。
歯をみがいて、制服に着替えた。
カバンを背負って食堂に向かった。
ちなみに学園のカバンはスリーウェイなっていて、手持ちと肩掛けとリュックになる。
オレはリュックとして使うのがほとんどだ。
食堂の入り口にはウェイターが二人いて、空きテーブルの札を渡してくれる仕組みになっていた。
オレは野間が席取りしてくれているので、行列に並ばずにLINEで教えられたテーブル番号をウェイターに言い、IDカードを端末にかざした。
朝食はビュッフェなので、トレイを持って好きな食べ物を選んで、野間が取ってくれているテーブルについた。
「おはよう。席取ってくれてありがとうね」
と、オレ。
「おせぇよ」
と、野間。
野間の横にトレイを置いて、カバンを背中からおろして、床に置かれているカバン入れに入れた。
「おはよう」
野間の前の席に座っている野間のルームメートの、立花陵 くんに挨拶した。
陵くんは、女の子みたいにかわいいのに、生徒会長の親衛隊に入ってる。
あいつのどこがいいのかわからないけど、人それぞれだし。
「おはよう、桜井。目の下の隅すごいよ。寝不足?」
と、陵くん。
「昼間寝すぎて、なかなか寝られんかった」
と、オレ。
「それ、寝不足じゃねぇだろ」
と、野間が笑った。
「夜、寝ないとお肌に悪いよ。桜井は素に頼って、手入れしなさすぎ。洗顔クリームとシェービングクリームしかなかったじゃん」
と、陵くん。
オレの部屋に時々遊びにきてたけど、洗面台チェックされてたんだ。
他にも、いろいろ持ち物チェックされてるかもしれないなぁ。
陵くんのトレイの中は野菜とお肉中心。ご飯などの炭水化物はなし。
親衛隊員の美意識はすごい。
「それに、日焼け止め塗らないとシミになるよ。きめ細かいんだから、シミになったら取れないよ? レーザーでシミとりしないと、いけなくなるんだから」
と、陵くん。
「力説してもダメだよん、陵。こいつ、美的感覚ずれてっから」
と、野間。
「失礼な。キレイなもの、かわいいもの。ちゃんと理解してますよ」
と、オレは笑って野間のおでこをこづいた。
「自覚ないのが、桜井の取り柄だけど。はた迷惑なの、それ。早く食べないと、冷めちゃうよ」
と、陵くん。
はた迷惑?
腑に落ちないてんはあるけど、
「いただきます」
と、オレは手を合わせてから、朝ごはんを食べ始めた。
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