48 / 69

第48話 風紀委員長はかずくん

オレたちが教室に入ると、すでに龍ヶ崎はきており、取り巻きに囲まれていた。 特に変わればえのしない毎朝の光景。 自分の机につっぷして、龍ヶ崎を見た。 なにが楽しいのか、にこやかにうっすらと微笑んでいた。 作り物の笑顔。 もっと底意地の悪い笑いかたをするのに。 ずっと、見てるのに、気付かない。 それは、向こうがこっちを見ないからだ。 本当に、セックスするだけの相手なんだな、オレは。 急に教室が静かになった。 本鈴前に担任が来た? 「いい度胸だな、桜井悠人。いつなったら、委員会室に来る気だ?」 とつぜん頭上からふってきた横暴な低音。 顔をあげるの、面倒くさい。 さすがに、異変に気づいたか、龍ヶ崎がオレを見た。 それ以外の人も、オレのこと見てるけどねぇ。 「風紀委員になったって、昨日、聞いたの。用もないのに、行くようなとこじゃないでしょ、委員長」 と、机に頭がへばりついたまんまのオレ。 「わざわざ、俺様自ら出向いてやったのに、いい態度だな」 自分で『俺様』だって。 バカなの? 声の主である風紀委員長が、オレの髪の毛をわしづかみ、顔をあげさせた。 静まりかえっていた教室がざわつく。 オレをぞんざいに扱う人なんていない。 ましてや手荒な真似なんか、龍ヶ崎以外にはされていない。 あ、此花先輩にも、ひどいことされてたわ。 野間がとっさに風紀委員長の腕をつかんだ。 「放課後、風紀委員室に来い」 と、言ったあと、オレの髪の毛をはなした。 「大丈夫か?」 と、野間がオレの細い髪の毛を心配してくれた。 見上げた風紀委員長は、短髪黒髪のイケメン。 幼稚園から一緒の桐ノ院和孝(とうのいんかずたか)こと、かずくん。 かずくんが、わざわざオレを呼び出しに来る必要なんて、ないのに。 うちのクラスには、風紀副委員長の龍ヶ崎がいるのにだ。 風紀委員長って、ほんと、バカなんだから。 「わざわざありがとう、かずくん」 と、オレ。 かずくんは、すっげぇイヤそうな顔をしてから、教室を出ていった。 「風紀委員にいつなったん?」 と、野間。 「1日からだって」 「神崎さんに、とうとうおとされたの?」 と、野間。 神崎さんというのは、元風紀委員長で、高等部3年の先輩だ。 オレに風紀委員に入れとしつこく勧誘してきた人。 「そんなとこ」 と、オレ。 「委員室になんで行かないの?」 「昨日、委員になったって聞いたばっか」 「なに、それ?」 「だろ?」 「て言うか、最近慌ただしいよな。おまえのまわり」 と、野間に言われて、オレはかわいた笑いを返した。

ともだちにシェアしよう!