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第50話 もう終わるのに、キャラがまたふえました
「なに、襲われかけてんの?」
龍ヶ崎がオレの頭上で、クスリと笑った。
変態に、にぎられている手を、龍ヶ崎がさらりとほどいてくれた。
感謝はする。
するけど、ね。
ムッとして、龍ヶ崎と向きあった。
オレはかなり不機嫌な顔で見上げてやった。
「……笑いごっちゃないよ。貞操の危機だったんだから。こんな変態が風紀委員なわけ?」
と、オレ。
「佐藤 は変態でも、実行部のエースでちゃんと仕事は出来るから」
変態は否定しないのか。
「何しに来たの?」
と、龍ヶ崎。
今朝の出来事、見てたてしょうが、おまえは。
「俺様おバカ委員長に呼ばれたから」
と、オレ。
「律儀に応じなくてもよかったのに」
「オレって幽霊委員だから?」
「そうしとかないと、一回、来ちゃうと毎日こなくちゃならなくなるよ?」
「……なに、それ? 呪い?」
「桜井の嫌いな面倒くさい雑務をおしつけられるの」
「それ、やだ。バックレてもいい?」
「呼び出し無視すれば? 今まで、放置してたのに、いまさら感半端ないし」
「うっあああああああ~わあぁ」
とうとつに、佐藤が雄叫びをあげた。
とっさに龍ヶ崎にしがみついた。
「なに? 発狂?」
と、オレ。
怖いもの見たさで、顔を佐藤のほうにむけてみた。
佐藤は、眉尻をさげて半泣き状態だ。
「あんたら、人前でなに、キラキライチャイチャしてんだよっ!」
と、叫ぶ佐藤。
抱きしめられた格好だから、自然と至近距離になってしまい、その状態で話していたわけで。
指をからめて恋人つなぎをしたり、髪をさわって、みつめあったり、キスしたりしていないし。
断じて、いちゃついたりしてません。
「しゃべってるだけだけど」
と、オレ。
「しゃべるんだったら、ふつうに話せよっ! 抱きあって話すか、ふつう? 龍ヶ崎さんは桜井悠人の背中や腰にやさしく手ぇまわしてるし。あんたは龍ヶ崎さんの服をぎゅっとつかんでて、乙女かってツッコミいれたくなるくらいかわいらしくてっ……」
と、佐藤。
最後のほうは、泣きながらだったから、わかりにくかったけど。
「おれの青春かえせっ……、龍ヶ崎さんのバカ野郎っ!」
と、叫んだあと、走り去ってしまった。
「えぇっと、なにかな、いまの?」
と、オレ。
「発作だから、ほっとけ」
と、龍ヶ崎。
「バカ野郎だって。他の委員にののしられてんの」
と、オレが小バカにしたように笑ったら、
龍ヶ崎の手がオレの顔にふれてきて、長い指先が唇をかすめた。
「佐藤が全力疾走してたけど、なんかあったの?」
龍ヶ崎の背後から声をかけられた。
龍ヶ崎がついたてになっていて、人が近づいたのがわからなかった。
「トレーニングだろ?」
と、龍ヶ崎の手がおろされ、振り返って答えた。
後ろにいた人が、
「いらっしゃい、桜井」
と、にこやかに微笑んだ。
「永島 って風紀だったの?」
と、オレ。
何度かクラスメートになったことがある永島瑛翔 だ。
「桜井も風紀になったんだから、頑張ってね」
と、握手をもとめられた。
差し出された手を無視出来ず。
握手をかわした。
龍ヶ崎が永島の後ろで、しらけた目でオレを見ていた。
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