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第52話 自分の席くらい自分で決めたい
かずくんに腕をつかまれて、手前に体を引かれた。
ぐらっとかしいだ体を、高槻くんにささえられた。
「ちっ」
と、かずくんが舌打ちした。
高槻くんは、オレより小柄なのに片腕でしっかりと抱き止めてゆらがない体だ。
背中から抱きすくめられているから、顔をひねって見返した。
「なんかきたえてる?」
と、オレ。
「とうとつですね」
と、メガネの奥の黒目が細められた。
「桜井」
名前を呼ばれて、龍ヶ崎を見たら、目線で座れと指示された。
高槻くんの腕をほどいて、目の前にいるかずくんを無視して、指定された机についた。
イスをひいて座り、両前腕をついて顔をあげた。
無表情な龍ヶ崎と目があった。
上座の席が嫌なんじゃない。
誰かの居場所を取るのが嫌なんじゃない。
真正面に座る龍ヶ崎が嫌なんだよ。
龍ヶ崎が視線をはずしてくれないから、自分から目をそらした。
かずくんは上座にどんと座った。
オレが指定された机に座ったのに、不機嫌なまま。
別にかずくんの機嫌なんかどうでもいいし。
龍ヶ崎もどうでもいい。
って、どうして思えないんだろう。
いつも冷たくて無表情なのに、声ひとつで不機嫌なのがつたわってくるのって、なに?
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