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第53話 風紀委員会入会手続き完了しちゃったよ

高槻くんに手渡されたクリアファイルから用紙を取り出し、風紀委員の規約を読んでいった。 名前を記入すればよいだけになっている用紙が4枚。 風紀委員会入会申込書。 風紀委員規約同意書。 風紀委員守秘義務事項漏洩禁止誓約書。 印鑑が押印している使用印鑑登録書。 カバンからペンケースを出して、ボールペンを取り出し名前を記入した。 署名捺印と言われたけど、登録書に押されている印鑑を持っていない。 俺様バカ委員長のかずくんに聞けばいいの? オレの隣の席で、鬼のようなスピードで書類の山を片付けていく永島には、聞けない。 ずっと突き刺さるような視線を送ってくる目の前の人にも聞けない。 龍ヶ崎の二つ隣の席の高槻くんに、終わったから、と、頑張って思念を送ったら、 「読まれましたか?」 と、高槻くんが立ち上がった。 「署名もした。登録印鑑はどこにあるの?」 「ぼくが預かっています」 取りにいくために、腰をあげようとしたら、高槻くんは下座からオレの机まできてくれた。 印鑑ケースに入った印鑑を渡されて、 「シャチハタじゃないんだ」 と、オレ。 「訂正印も掘ったもので一点ものです。機械堀りだと使用印鑑登録書の意味がなくなりますから」 と、高槻くん。 「中等部の生徒会で印鑑使ってたろうが」 と、かずくん。 「使ってないよ。オレがはんこ押すような書類なかったし」 中等部の生徒会は会長と副会長の署名捺印がほとんどで、他の役員の署名なんてなかった。 ケースを開けとら、認印と訂正印が入っていた。 「……朱肉」 と、小声でつぶやいてしまったオレ。 「引き出しにありませんか?」 と、高槻くん。 「勝手に開けれないよ」 「あんがい、細かいことに気を使うんですね」 それ違うから。 常識というか、マナーというか、エチケット? 「はいこれ」 右隣の永島が朱肉と捺印マットを貸してくれた。 「桜井は見てくれや素行で噂が先行してるけど、こんなんだから。委員長達や生徒会の人みたいに非常識じゃないからね、(りん)」 と、永島。 高槻くんて、りん、ていうんだ。 もっと、武士みたいな感じの4文字呼びで、お固い感じだと思ったけど、普通だ。 普通より、かわいい感じの呼び名で、ちょっと驚きだ。 ところで、永島。 こんなん、って。 どんなんなん? 頭の中を?が占めているが、捺印していく。 4枚目を押したら、 「お預かりしますね」  と、高槻くんはオレの署名捺印した用紙を持っていき、委員長にそれを渡して、自分の席についた。 ……秘書だね。 りっぱだよ、高槻くん。 永島も仕事のスピードが落ちない。 仕事をしなさそうな風紀委員のツートップしか知らないから、すごく、二人は優秀に思えた。 案の定、委員長と副委員長は座っているだけで、仕事してないのにね。

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