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第56話 修ちゃんはスキンシップがお好き?
「……修ちゃん、苦しい」
と、オレ。
2年も戻ってきたことに気づかなかったのは、悪いと思うけど。
1学年6クラスあって、同学年の生徒が200人越えているんだから、近隣クラスじゃなきゃわからない。
修ちゃんのほうから、声をかけてくれれば、もっと早くに再会できたはずだ。
偶然に出会える確率の低さが露呈された。
「会いにきて欲しかったな」
と、オレ。
修ちゃんに、さらに強く抱きしめられた。
「痛いってば……」
「悠ちゃん補充中」
と、ますます力強く腕の中に囲いこまれていく。
「ちょっ、修ちゃんっ! もうぉ、暑苦しいっ!」
修ちゃんの腕の中でもがくけど、脱出できないっ。
「非力。……かわいい」
びくん、と体がはねた。
修ちゃんに耳元でささやかれたからだ。
修ちゃんが、オレの体から少しだけ離れて、顔を見た瞬間に、目を見開いた。
けど、すぐに意地の悪い笑みをうかべて、オレをみつめてきた。
「……やっぱ、ヤリチン王子。エロい」
「はあ? バッカじゃないの?」
「ふくれっつらも、かわいい」
顎をつかまれて、顔を固定せれてしまった。
なにがしたいのか、さっぱりわからん。
「……イヤそうな顔、色っぽいね」
と、修ちゃん。
永島がガバッと顔をあげた。
修ちゃんの頭ごしに、オレのことを無表情で見てきた。
……永島さん、仕事のジャマしてすみません。
修ちゃんは見てくれがおかしくなってしまったけど、頭もかなりおかしいようだ。
「桜井先輩、休憩するんで、お茶いれましょうか」
と、高槻くん。
オレの姿勢が、体ごとずっと右側をむいていたから、高槻くんの顔を見れなかったけど、声の抑揚に変化なし。
仕事が中断しても、嫌悪感も怒気も伝わってこない。
あの、永島ですら、醒めた目で見返してきたというのにだ。
徹底した秘書力の持ち主だ。
気配で高槻くんが立ち上がったのがわかった。
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