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第58話 生粋にもいろいろいるんだよ

身なりを整えただけで、生粋呼びされる意味がわからない。 ふつう誰だって、衣服が乱れればもとに戻すだろうが。 親に連れられて、お絵描きして、みんなと遊んで、園長先生とお話しして、入園しただけだ。 児童や生徒からは別格扱いをされるが、学園からは何かを優遇されることはなく、特別扱いを受けたこともない。 「どこが生粋?」 と、オレ。 「所作」 と、高槻くん。 「は?」 ふつうに服をただしただけ、だけど。 「……意味わからん」 と、オレは首をかしげた。 「そこが生粋の所以(ゆえん)」 「なに、それ」 よけいに意味不明だ。 「意識せずにしているしぐさが、ぼくらには優雅にうつるんですよ」 「ぶわっ!」 と、委員長が盛大に吹き出した。 優雅? そんなことを言われたの初めてだ。 微塵も持ち合わせていませんよ、そんなもん。 賢そうなのに、バカなとこもあるんだね、高槻くん。 「凛、そいついろんなことに鈍いから。自分のこと普通だと思い込んでいるし」 と、生粋である委員長。 「あぁ、そうなんですか」 と、あっさり納得した高槻くん。 「出自も容姿もいいのに、残念な人なんですね」 と、高槻くんがしみじみ言った。

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